歪んだ月が愛しくて2



◇◇◇◇◇





夕暮れの薄暗い空き教室。
机の中に入っていた1通の手紙によりこの場所に呼び出された人物がいた。





ガラッと、ドアが開く。





「……誰?」





空き教室に入って来たのは同じ制服を身に纏う人物。
黒髪の短髪に黒縁眼鏡のスタイルは渦中の人物を連想させた。
痛め付けて陥れてやろうと画策したのに、何の遺恨もなかったかのようにあっさりと助けてくれた彼のことを。
しかし目の前にいる人物は全くの別人で、話したこともなければ見たこともない人物だった。





「待たせてしまって申し訳ない」

「いえ…」





呼び出された人物は初対面の男に平然と話し掛けられて少しだけ警戒心を抱く。
しかし本来の人懐っこい性格が邪魔をして過度な警戒心を持てなかった。





「別に怪しい者じゃないよ。今日君に来てもらったのはこれを渡したかったからなんだ」





そう言って手渡されたのはまたもや1通の手紙だった。





「これは…」

「ある人から預かったんだ」

「ある人?」

「手紙の裏を見てもらえば分かるよ」





手紙の差出人欄を見る。
そこには見知った名前が書いてあった。





「っ、何で、あの人から…」

「突然だったからね、彼が学園を去ったのは」





目の前の男が言うように、手紙の差出人にはお別れの言葉すら言えなかった。
まるで初めから存在していないかのように扱われて、怒りを覚えたと同時にショックだったことを思い出す。
その感情のまま彼に八つ当たりして、一方的に酷い言葉を投げ付けて傷付けたと言うのに、彼は弁明するばかりか暴漢から自分を助けてくれた。
あの出来事がきっかけで彼に対する印象が変わった。
それと同時にあの出来事の発端となった人物への印象もガラリと変わってしまった。良い意味でも、悪い意味でも。
そんな人物からの突然の手紙に困惑しないはずがなかった。





「確かに渡したよ。後は君の好きなように















―――白樺くん」





そう言って男は空き教室から出て行った。
手紙を渡されただけで碌に話もしなかったが、一体彼は何者だったのだろう。それと手紙の差出人とはどう言う関係なんだろうか。



様々な疑問が浮上する中、空き教室に取り残された男は糊付けされた手紙の封を破いた。


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