歪んだ月が愛しくて2
『どうやら第4走者の皆さんは苦戦を強いられている模様です。制限時間は間もなく2分を切ろうとしています』
2分か…。
もう時間がないな。
こうなったら適当な人を見繕って協力してもらうしかない。
でも一体誰に?
「おい、時間がねぇぞ」
「……分かってる」
「まさか、諦めるつもりか?」
「違う、けど…」
時間がないのは分かってる。
諦めるつもりもない。いや、諦められない。
たかが体育祭と思う人もいるかもしれない。
でもクラスの皆が頑張ろうって、勝とうって言ってくれたから。
「何のための応援団だ?やる気がねぇ奴に応援されても迷惑なだけだ。適当に手振って声出すくらいなら案山子にでもやらせとけ」
「、」
何よりこんな俺を応援団に推薦してくれたアゲハに、競技が終わった後一々俺に報告しに来てくれる律儀なクラスメイト達に俺も同じくらいの熱量で応えたいと思った。
やる気がないわけじゃない。ましてや適当にやるなんてとんでもない。
「何迷ってるのか知らねぇが、ない頭で考えて迷うくらいなら行動しろって言っただろう」
迷う?
俺が?
「お前が今やるべきことは一つじゃねぇのか」
誤魔化しのない芯のある言葉。
この人はいつも言葉足らずで、無愛想に突き放すような言い方しかしないのにその言葉は俺の心に真っ直ぐに突き刺さる。
会長の黒曜石から目が逸らせない。
その思考を読み取りたくても何を考えているのかさっぱり分からない。
「……会長」
でも、だからこそ気になる。
「そこまで言うなら、協力してもらうから」
ああ、やっぱりムカつくな。