歪んだ月が愛しくて2
「おい、いつまで固まってるつもりだ。とっととお題のものを見つけて来い」
会長は読んでいたはずのバイク雑誌から顔を上げると、鬱陶しそうに前髪を掻き上げながらそう言った。
問題はこの人だ。
会長のことを気になるか気にならないかと問われれば、間違いなく気になる部類に入る。
俺が喧嘩出来ることも、その残骸の成れの果てもバッチリ見られたのに、会長は一切の追及をしなかった。その上、俺の正体にも一切触れて来ない。
……分からない。
会長の考えも、会長自身も。
それに、あの女性は誰?
彼女?婚約者?
ダメだ。
余計に分からなくなる。
考えることが多過ぎて、頭の中が全然纏まってくれない。
「……ムカつく」
「あ?」
……ああ、そうか。
俺、会長にムカついてたのか。
こっちは暑い中走ったり応援したりしてるって言うのに、自分は暢気に女とイチャイチャしてんだもん。そりゃムカつきもするよね。
大体、彼女か婚約者か知らねぇが、端っからそう言う人がいるならキスなんかしてくんじゃ…っ、
「……おい、今度は顔赤いぞ?大丈夫か?」
「ア、ンタには関係ないっ!」
しまったぁぁあああ!
墓穴掘った!
犬に噛まれたと思って忘れてたのにぃいいい!
「あっれ〜?りっちゃんってば反抗期?」
「やけに尊に対して当たりが強いですね。貴方、立夏くんに何したんですか?」
「やった前提かよ」
「当然でしょう。基本立夏くんは素直で大人しい子なんです。貴方達が余計なちょっかいさえ出さなければね」
「素直?大人しい?……あれが?」
「指を差すな」
パタパタと顔を仰ぐ横で会長は「何言ってんだコイツ」みたいな顔して俺を指差した。
しかも“あれ”呼ばわりとは、ムカつく上に失礼な奴め。