歪んだ月が愛しくて2
「おい、仙堂っ!」
アオの手を引いたままこの場を去ろうとした時、アオの親衛隊の1人に呼び止められた。
「お前、葵様に気安く触るな!」
「は?」
「それ!手だよ手!」
「手?……ああ、ごめんごめん」
「ううん。僕は全然気にしてないよ」
自然と離れた俺とアオの手。
あっさり離れたことが余計気に入らなかったのか、それとも俺とアオの会話が癇に障ったのか知らないけど、親衛隊の1人が吠えたことで他のメンバー達も次々と声を荒げ始めた。
「仙堂!前から思ってたけどお前葵くんの何なんだよ!?」
「いつも仲良さそうに一緒にいて、今だってちゃっかり手まで繋ぎやがって羨ましいんだよ!離れろ!」
「いつまでも正義のヒーロー気取りしてんじゃねぇよ!」
「さっきの借り物も卑怯な手まで使ってそんな勝ちたかったのかよ!」
「いいよな、お前は覇王で。その肩書きのお陰で何やっても許されるんだからよ」
「良かったな、神代に拾ってもらえて」
まあ、こうなるよな。
俺を非難する声は大抵同じ。
最近では代わり映えがなくてつまらないとさえ思っていた。
正直あの頃に比べて他人に非難されることに慣れてしまった自分がいた。
何を言われても痛くも痒くもないし、寧ろ事実だし、今は笑いを堪えるのに必死だった。
「やめてよ皆!未空くんは関係ないでしょう!僕の友達に酷いこと言わないでよ!」
「っ、でも…」
「葵くんはコイツに騙されてるんだよ!」
「俺達は葵様の親衛隊なんだよ!抜け駆けする奴は見過ごせないよ!」
「だから未空くんはそんなんじゃなくて僕の友達なの!僕が誰といようと皆には関係ないでしょう!」
「アオ、いいって」
「良くないよ!何で僕を助けてくれた未空くんが酷いこと言われなくちゃいけないの!可笑しいよ!」
「おおっ、アオが大声出すなんて珍しいじゃん。さっきまでビビって泣いてたくせに」
「茶化さないで!僕は真剣に言ってるのに!」
「だから気にしなくていいって。実際本当のことだし」
「、」
……可笑しいな。
やっぱり何も感じない。
俺、どこか壊れちゃったのかな。
昔はもっと悲しいとか悔しいとかちゃんと感じていたはずなのに………いや、元からか。
きっと俺は生まれた時からどこか壊れていたんだ。
だから皆に非難されてもへらへら笑っていられるし、そんな俺を腫れ物扱いする連中を見ると面白くて仕方なかった。
「……ふはっ」
「み、く、くん…?」
だから本当の親にも見捨てられたんだろうな。