歪んだ月が愛しくて2
『ここで藤岡選手が一着でゴールしました!尊様、大変お疲れ様でした!さて、藤岡選手のお題は一体何だったのでしょうか!』
リカのお題を確認するためにみっちゃんは軽やかなステップで2人の元に向かった。
テンション高いな。
てか魂胆丸見えだよ。
『……ねぇ、いつまで繋いでるわけ?』
「っ!?」
「………」
そこで漸くリカは慌てて尊の手を離した。
でもきっとリカは気付いていない。
リカの手が離れた瞬間、みっちゃんの眉間の皺がなくなったことも、反対に尊の眉間に皺が寄ったことも。
『で、お題は?早く見せてよ』
「え、あー…あれ?紙が…」
『まさか無くしたの?』
「いや、確かここに入れたはずなんだけど」
『あれがないと失格なんだけど』
「えっ、嘘でしょう!?ちゃんと“これ”持って来たのに!?」
「おい、人に走らせといて“これ”呼ばわりとはいい度胸してんじゃねぇか」
「だから協力してもらうって言ったじゃん。そもそも挑発して来たのはそっちだよね?」
「お前がモタモタしてっからだろうが」
「モタモタしてたんじゃなくて考えてたんだよ」
「同じじゃねぇか」
「同じじゃねぇよ」
『ま、まあ…、今回は尊様のお手を煩わせてしまったから特別に失格にはしないであげるけど』
「ありがとう女王様っ!」
『調子に乗るな。もう紙はいいから早くお題教えてよ。後が支えてるんだから』
「あー…お題ね。お題は、その…」
『?』
「き、き…」
「き?」
「だから、き…っ」
リカは喉に何か閊えたように言い渋る。
「はっきり言え」
「………会長には言いたくない」
「あ?協力してやっただろうが」
「いや、だって…」
リカらしくないウジウジした態度に違和感を覚える。
尊もそんなリカに気付いて訝しい表情を見せた。
でも、何だか端から見たら、見つめ合っているようにも見える。
ただ手を繋いで走っていただけ。それだけなのに。
『尊様の前で言い難いなら僕にこっそり教えて』
痺れを切らしたみっちゃんが提案するとリカは渋々みっちゃんの耳元に顔を近付けて口を動かす。
するとみっちゃんから「………はぁ?」と呆れたような声が上がった。
かと思えば訝しげな視線を送ってリカの動向を観察しているようだった。