歪んだ月が愛しくて2



「で?」



尊の急かす声にみっちゃんだけが反応する。
リカにあってはどうやら無視を決め込んでいるらしい。



『え、とー…藤岡選手が引いたお題はき…「ちょ、ちょちょっと待った!俺はみっちゃんだけに教えたつもりなんだけど!?それ言っちゃうの!?」

『言うでしょう、それがルールなんだから。それに“僕にこっそり教えて”とは言ったけど皆の前で発表しないとは言ってないしね』

「だ、騙された…」

「もう諦めろ」

「………怒らない?」

「あ?」

「だから、怒らないかって聞いてんの…」

「……お前、それ態とか?」

「何が?」

「………」



……分かってない。

リカは全然分かってないよ。

そんな恥じらうように下から睨み付けたって何も怖くない。寧ろ逆効果だ。



もうオタク眼鏡の意味がないよ。
初めは眼鏡を掛けてる時と掛けてない時の印象が全然違うと思った。
だからリカの眼鏡が伊達だと分かった後も人前で眼鏡を外させたことはないし、リカの素顔は俺だけが知っていればいいなんて思ったりもした。
でもさ、やっぱり眼鏡を掛けていようがそうじゃなかろうがリカはリカだなって思うんだ。
ツンツンなリカも、猫耳リカも、新歓で尊と勝負してた時も、俺達の前で理事長に啖呵切った時も、リカに初めて大好きって言ってもらえた時も、黒い団服を身に纏う今も、どんなリカだって可愛くて綺麗で格好良くて、結局は自分がどれほどリカのことを大好きか思い知らされただけだった。



だから、正直この光景はキツい。



「未空くん、僕は何も感じない人間なんていないと思うよ」



葵の言う通りだ。
この光景をキツいって思った時点で俺には人の心がある。
それもクソみたいに軟弱な心が。



そこにみっちゃんの咳払いが聞こえた。
多分みっちゃんも俺と一緒なんだと思う。
俺がこの光景を見せられてキツいと感じたように、みっちゃんもどうにかしてこの空気を払拭させたいと思ったに違いない。
それでもみっちゃんは司会と言う立場から進行を続ける。



『んんっ、えー…藤岡選手が引いたお題と言うのは………き、















“金髪の人”だそうです。見事お題達成です。オメデトウゴザイマス』



途端、歓声と悲鳴で盛り上がっていたグラウンドが一気に白けた。
みっちゃんも気まずそうにそそくさと放送席へと戻って行ってしまった。



……うん。気持ちは分かるよ。
あんだけ溜めて溜めて引っ張ってたくせに金髪?
何だそりゃ。言い渋ってた意味が分からない。拍子抜けもいいところだ。


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