歪んだ月が愛しくて2
「……もういいだろう。そろそろ時間だ」
会長はスマートフォンのディスプレイに表示された時刻を確認して言う。
「時間?」
「お前、応援団のくせにプログラムも確認してねぇのか?借り物の次は騎馬戦だぞ」
「えっ、ヤバい!もう行かないと!」
「早く行け。また未空が騒ぎ出すぞ」
「行けって…、会長は戻らないの?」
てか騎馬戦にも出るつもりないのか。
何のためにあそこで寛いでたんだよ。
「俺はコイツに話がある」
「話?」
会長が、我孫子に?
「わあ、何だろう楽しみぃ〜」
「くっ付くな鬱陶しい」
我孫子は会長の腕に自分の腕を絡めて距離を縮める。
よく考えればこの2人のツーショットを見るのは初めてだった。
それなのに全く違和感がない。しかも妙に息が合ってるように見えるのは気のせいだろうか。
「じゃ、俺は行くけど…」
チラッと、2人の姿を確認する。
「ああ」
「負けんなよ〜」
でも腑に落ちない。釈然としない。
このモヤモヤした感覚は一体何だろうか。
「―――余計なことを言うな」
「てことはもう解決済み?」
「本人から聞いてる」
「なーんだ、面白くねぇの」
「で、そっちの用件は何だ?いつものように電話じゃなく態々会いに来たってことはそれなりの用件なんだろうな」
「ああ、それなりの情報だぜ。しかもかなりタイムリーだ」
「前置きはいい。簡潔に話せ」
「立夏のことなのに?」
「あ?」
「奴等が動き出したぞ。狙いは間違いなく立夏だ」
「……逆恨みか」
「それしかねぇだろう。しかも奴等は今ここにいる」
「は?ここって、まさか…」
「通常聖学の警備体制は銀行並みに厳重だ。ただそんな聖学でも警備体制が甘くなる時がある。それが…」
「体育祭に便乗して乗り込んで来たってわけか、クソッ」
「おい、どこ行くんだよ?」
「決まってんだろう。奴等が立夏に接触する前に片付けんだよ」
そう言い残して会長はグラウンドに向かって走り出す。
きっと今の情報を覇王で共有して策を練るつもりだろうがタイムリーな情報だけに時間は限られていた。
「間に合うといいけどな…」
ゆるりと、我孫子の口角が上がる。
そしてポケットからスマートフォンを取り出して特定の人物にメッセージを送った。