歪んだ月が愛しくて2
乱れた呼吸を整えている最中、会長は手の中に放ってしまった白い液体をまるで俺に見せつけるかのように舌を這わせた。
「アイツ等にもこうやってイカされたのか?」
「は…、はぁ…っ、されてないって、言ったじゃん!何なんだよさっきから…。優しいのか、怒ってんのか、もう分かんねぇよ…っ」
ベッドの上で仰向けになりながらほんの少しの抵抗のつもりで、顔の前で腕を交差して会長の視線から逃れる。
逆ギレなんてどうかしている。別に会長が優しかろうが怒っていようが俺にはとやかく言う権利はない。寧ろ怒られても仕方ない立場なのに、薬を理由に熱に抗えない自分が不甲斐なくて惨めで、どうしようもない苛立ちを会長に当たってしまっていた。
2回も絶頂したことにより思考に掛かっていた霧が少しずつ晴れて来た。そのせいで会長を怒らせてしまったのは頂けない。反対に熱を持った身体は更に快楽を求めて敏感になっているようだった。
そんな俺の腕に会長がチュッと唇を落とす。
それでも俺は交差する腕を解かなかった。
「怒ってねぇよ、少なくともお前には」
俺には?
じゃあ、誰に怒ってんの?
そう言い掛けた時、会長の手が俺の手を引いて上半身を起こされた。
目の前にあるのは、吸い込まれそうなくらい深い黒曜石だった。
「怒るなんてそんな可愛いもんじゃねぇよ。もし奴等が少しでもお前に触れたら、もし俺が今したようなことを奴等がお前にしたとしたら…、怒るだけで足りるわけねぇだろう」
「た、らないって…」
「さあな。確かなのはお前がやったあの程度の怪我じゃ俺は満足出来ねぇってことだ」
「あの程度って、会長も見ただろう!あれのどこが…っ、ヒィッ!?なっ、何して…」
「分かんだろう。さっきお前が出したもんを塗ってんだよ」
人が話してる途中にゴソゴソと手を動かしているかと思えば、会長は先程俺が放った白濁を後ろの孔に塗り込んでいた。その指は後ろの割れ目に触れるだけで決して中に侵入しようとはしなかった。
何で?と言う疑問が際限なく沸いて来る。と同時に初めての感覚に身悶えて思わず会長の腕を掴んで声を押し殺す。
本来なら不快でしかない行為のはずなのに、何でこんなみっともない声が出てしまうんだろう。
摂取した薬が相当ヤバいものだったと言う事実と、再び芯を持ち始めた自身に俺はどうしていいか分からなかった。
「苦しいか?」
それは何に対しての言葉だろうか。
呼吸?それとも終わりの見えない快楽?
どちらかではなくどちらも苦しい俺は、会長の言葉に何度も首を振って頷いた。
「やめ…、もうやぁ…っ」
「なら、こんなことはもう二度とするな。お前が恐極達にしたことを言ってるんじゃない。お前が危ないものだと分かっていながら平気でそれを口にしたことを言ってるんだ。お前が二度と危ないことはしないと今この場で誓うならこれ以上のことはやめてやる。だが約束出来ないならこのままこの小さい孔に指を突っ込んで摩って掻き混ぜて解れたら俺のをここにぶち込む。痛みで泣き喚いても俺が満足するまでやめるつもりはない」
「っ!?」
「俺はどっちでもいいぞ。好きな方を選べ」
「す、する!もうしないって約束するからっ!」
半ばヤケクソ気味に叫ぶと、会長は「そうか」と言って案外すんなりと納得してくれた。
でも後ろへの刺激がぱたっとなくなったことで物足りなさを感じてしまった自分がいた。
変わりつつある自分の身体が恐ろしくて視線を下方に向けると、不意に会長の大きな手が俺の膝に触れた。
すると掴まれた膝頭に口付けられ、会長の唇が下へ下へと落ちて行き、内腿に辿り着いたところで強く吸い付けられて思わず腰が跳ねた。
「もっと足開けよ。舐めらんねぇだろう」
「っ、や、やめてくれるって言ったじゃん!」
「これ以上ケツ弄んのはやめてやっただろう。それにこのまま放置されて辛いのはお前の方だぞ」
「いい、もういいから!汚いからやめ、」
「汚くねぇよ」
囁く吐息が自身にかかり、指ではない柔らかい唇の感触を感じた時には思わず会長の頭を両手で押し返した。
必死で抵抗したつもりだったが、会長は敏感になっている先端に舌を這わせて優しく舐め辿る。
先端を行き来する舌先に喉が鳴る。
既に手遅れではあるが、変な声が出ないように必死で口元を押さえていた。
「…っ!!」
声に気を取られている隙に、腿を押し広げられ深く咥え込まれてしまい、背筋が引き攣り目の前が真っ白になった。
「っふぁ……、あ、…っ、はぁ…っ」
最初はねっとりと熱い口腔の中で優しく舐めていたのに、少しして痛みを感じるほど強く舌を押し付けられるようになった。
会長は根元や下の袋を指先であやしながら、限界まで反り返っている性器を何度も口から出しては深く咥え込む所作を繰り返し、濡れた音を立てて全体を強く吸い嬲った。
いつしか背中は反り返り、膝がシーツに擦れるほど広げられている足が引き攣り、喉から押さえきれない喘ぎ声が漏れていた。
「ああ、ぁ…っ、は、なして……、あぁっ」
やめろと言いたくても喉から出る声は勝手に変換されて、鼻にかかった甘い響きを持って唇から溢れる。
どんなに抗おうとしたところで相手の膂力に敵わないことは、抑え込まれた足を動かすことが出来ないことと、掴んだ衣服の上からでも分かるほどの強靭な肉体を肌で感じて理解していた。