歪んだ月が愛しくて2
「我慢すんな。出さねぇと辛いままだぞ」
咥えたまま喋らないで欲しい。
そんなところで喋られたら歯が当たって達してしまいそうになる。
「ぃや、だ…っ」
肺に残った僅かな声を吐き出すように、掠れた声ではっきりと拒絶した。
「やだ…っ、や、や、やぁ……っ」
「立夏?」
会長が戸惑ったように性器から口を離して顔を上げた。
そして俺の手首を掴もうとした手を、逆に掴んで首を横に振った。
「どうした?」
その声に、じんわりと瞳の奥が熱くなる。
鼻の奥がツンと痛んだかと思うと、次に瞬きをした時には目尻から温かな雫が溢れ落ちていた。
「もう、やだ…っ」
恥ずかしい姿を晒して、尚且つこんなみっともない自分まで知られたくなかった。
幻滅されたくない一心で、両手で顔を隠して気付かれないように涙を拭いた。
「……俺に触られるのが、そんなに嫌か?」
「そ、じゃなくて、」
もう訳が分からない。
色んな感情が入り混ざって頭の中がぐちゃぐちゃだ。
経緯も、元凶も、理由も、考える余地すらない。
そんな俺の脳内に唯一ある苦い感情は、会長への罪悪感だけだった。
「こんなこと…、かいちょには、させたくなかったんだよっ」
顔を覆っている腕が邪魔で、息が苦しくて肺から絞り出すように必死に声を出した。
この行為をやめて欲しくて言ったわけではないが、結果的に会長の動きを止めるには効果があったかもしれないと思った直後、会長に両腕を剥がされて唇を塞がれた。
息が苦しいほど抱き締められたまま、会長の舌に口の中をめちゃくちゃにされて、巧みな舌使いにひとたまりもなく陥落した。
「俺に触られるのは嫌じゃないんだな?」
会長は唇を離してそんなことを言う。
そして浅い呼吸を繰り返す唇に会長の指が拭う。
「ゃ…、じゃない…」
くらくらする頭では碌な考えしか浮かばないが、嫌かそうでないかの判別くらいは付く。
恐極組の連中に身体を弄られた時は吐き気がするくらい気持ち悪かったのに、会長に触られるのは嫌じゃない。寧ろ嫌じゃないから困ってるのだ。
他人の、しかも同性の男に触られて嫌じゃないなんて、色んな意味で終わってる。
「だったら何の問題もねぇな」
「もんだっ、あ、ああぁんん…っ」
態と派手な濡れた音を立てて根元から先まで舐め上げる。
それにも息を殺して耐えようとしたが、会長の濡れた指先が足を開かれ露わになっている後ろの口に這わされ、唐突に深く潜り込んで来た時には脳髄が焼き切れたように頭の中が真っ白になり、理性とか罪悪感とかもう何もかも分からなくなっていた。
「く…っ、あ゛、あああぁ…ッ!!」
一度決壊すると止めることなど出来ない。
後ろに差し込まれた指に奥を刺激され促されるまま痙攣し、会長の口の中に放ってしまった。
激しい快楽と、それに上回る羞恥に意識が白く燃え尽きる。
思考が霧散していくのを感じながら、重力に逆らえず瞼が落ちていく。
「―――…」
意識が途切れる直前、会長の小さな囁きが耳に届いた気がした。