歪んだ月が愛しくて2
「神代会長も、この3人と同意見ですか?」
途端、風魔と目が合った。
何もかも見透かしたような不気味な目が、俺の本心を暴こうとする。
風魔の牽制する理由が分かった今、この話をここでするのは得策ではない。
だが風魔が中途半端に煽ったせいで陽嗣達の興味が一気にそちらに向いた以上、今この場を切り抜けたとしても何れ探りを入れるのは目に見えていた。
どう転んでも犯人の正体に辿り着くのであれば、俺の答えは一つしかない。
「餌を撒いたのはそっちだろう」
つまり興味持たせることを言ったのはテメーなんだからテメーでどうにかしろ、と言うことだ。
風魔にしても九條院にしても、こうなることは予想出来たはず。
その上で餌を撒いたならある程度の模範解答は準備済みだろう。
「他人事だと思って…」
「ふふっ、確かに少々お喋りが過ぎたようだね」
「笑ってる場合ですか」
「頼稀の悔しがってる顔は貴重だからね」
「悪趣味な」
そう言って風魔は観念した様子で渋々話し始めた。
「はぁ…、分かりましたよ。教えればいいんでしょう教えれば。但し、間違っても接触しようなんて考えないで下さい」
「どうして?」
「あんなキチガイみたいな奴とまとめに話し合えるわけがねぇからだよ。それにあれは…」
言葉を濁す、風魔。
それに違和感を覚えた九澄がすかさず追求する。
「あれは…、何です?」
風魔は険しい表情を崩さない。
隣に座る九條院に関しては苦笑するだけで核心に触れようとしなかった。
「……あれは、アンタ達の手には負えない」
「は?手に負えないってこっちには“神代”と“皇”がいるんだぜ。天下の表御三家に楯突ける奴なんかいるわけねぇだろう」
「あれには権力も肩書も関係ない。奴が首を垂れるのはたった1人の主だけだ」
「あ、るじ…?」
でも俺には分かる。
その単語が誰を指しているのか。
風魔の険しい表情も、九条院があえて核心に触れない理由も。
「奴の名前は八重樫晋助。関東指定暴力団白桜会若頭で八重樫組のトップだ」
それは立夏へと繋がる、一筋の軌跡。