歪んだ月が愛しくて2
「……昨日の夜、何者かによって恐極組が襲撃された」
「っ!?」
思いもよらぬ言葉に衝撃が走る。
「っ、そんな情報は入って来ていませんが…」
「俺は“風魔”ですからね。裏の情報であれば俺の耳に入って来ないわけがない」
「クソ!よりによって何でこのタイミングなんだよ!」
「タイミング良過ぎるでしょう…」
「……それで、組はどうなった?」
「恐極組はほぼ壊滅状態。屋敷にいた幹部や構成員は見るも無惨に殺られて顔の原型が分かんないほど悲惨な現状だったらしい。奇しくも難を逃れたのは愛人宅に入り浸っていた組長と護衛の数人。それと愛人との間に出来たガキとその護衛くらいですよ」
「、」
「マ、ジかよ…」
「何、それ…。皆殺しってこと?恐極ってそんなに恨み買ってたの?」
「ヤクザだからな…と言いたいところだが、恐極組は特に酷いな。奴等は一般人をカモにして薬を売り付け、金がなくなったら女は風俗に落とし、男は臓器を売って金に変える。外道としか言いようのないクズ中のクズなんだよ」
「成程。いつどこで恨みを買っていても可笑しくはないと言うことですか」
「そう言うこと」
「………」
何者かによって先を越された。
俺等の他にも恐極を恨む人間がいたと言うわけか。
それにしても未空や陽嗣が言うようにタイミングが良過ぎる。
まるでこちらの動きを読んで先回りしたかのような……いや、寧ろこのタイミングを狙っていたのか。
若しくはこのタイミングでなければ動けない理由があったとしたら。
(……まさか)
風魔は首を突っ込まない方がいいと言った。
だが言い方を変えれば、関わって欲しくないとも聞こえる。
もし恐極組の一件が俺等に関わって欲しくない人物に関係しているとしたら、風魔が牽制する理由とこのタイミングで恐極組が狙われた理由には何らかの繋がりがあるはずだ。
「そんで、誰なんだよ?その恐極組を殺った奴ってのはよ?」
繋がりなんて一つしか思い浮かばない。
「ヨージ、それって今は関係ないんじゃ…」
「しかし無視することも出来ない問題ですよ。風魔くん、君の話し振りからして犯人の見当は付いているんですよね。犯人は一体誰なんですか?」
「………」
風魔と九條院は何かを隠している。
それも立夏に関する何かを。
「“首を突っ込まない方がいい”って言いましたよね?」
「獲物を横取りされて黙って指咥えてるわけないっしょ」
「覇王の気性の荒さは君も十分理解しているでしょう」
「確かに気になることではあるけどさ…」
それを知ってか知らずか、陽嗣と九澄は追求の手を止めない。