歪んだ月が愛しくて2
しかし、それも主への一途な想い故の行動だった。
「……だからって殺し過ぎ」
「あぁ?ナッちゅわんのくせにこの俺に意見するとはいい度胸じゃねぇか。まだヤリ足んねぇからテメーが相手してくれるってかぁ?」
「そうじゃなくて、あの方が気に止むだろうが…」
その言葉に、晋助は一瞬だけ言葉を詰まらせた。
「……ケッ、だからって飼い主ヤられて大人しくマスかいてろってか?寝言は寝て言えボケ」
「言って置くけど、許せないのはこっちも一緒だから。でも俺達のやったことであの方が心を痛めたら意味がない。それに簡単に殺してやるより生きながらに死にたいと思わせてやった方がより地獄を味わせることが出来る。死にたくても死ねない地獄をね」
「テメーに言われるまでもねぇよ。女の股座に逃げ込んだフニャチン野郎と雌豚ホモビッチは殺してやる価値もねぇ。テメーの言う“死にたくても死ねない地獄”ってのを俺様直々にプレゼントしてやらぁ」
「し、しかし…、息子の方は既に“B2”により身柄を拘束されています。奴等がみすみす獲物を手放すとは思えませんが…」
「“B2”?……ああ、アイツの周りをチョロチョロ飛び回ってた虫野郎か。そういやおんなじ学校なんだったな」
「あっちには“風魔”がいる。下手に手を出すと面倒なことになる」
「チッ、一先ず父親の方を捜し出せ。細けぇことはそれからだ」
「了解です」
「もうやってるよ」
男達は足元に散らかった屍を踏み付けて、一歩一歩と足を進める。
眼下に広がるのは、残酷な現実。
それは彼等の王に手を出した代償だった。
「しかし、何故若は恐極の犯行だと分かったんですか?あの方から連絡が来たんですか?」
「連絡だぁ?そんなもんあるわけねぇだろうが。アイツは世界一……いや、宇宙一他人に甘えんのが下手クソなバカ野郎だからな。ましてやそれがテメーのことなら尚更だ」
「あの方はバカじゃない。訂正しろ」
「ハッ、じゃあ大バカ野郎ってか?大体アイツがすぐに連絡寄越せばこっちだってもうちょっとまともな対処が出来たっつーの。これでキレられたら不貞寝するわ」
「では、何故恐極に行き着いたんですか?」
彼等には、唯一忠誠を誓う王がいた。
「オトモダチが教えてくれたんだよ。親切ヅラして人の足元狙ってやがる卑しいオトモダチがなぁ」
王に逆らう者。
王の逆鱗に触れる者。
王を陥れようとする者には破滅あるのみ。
それが、この街の暗黙の了解。
「……よく言うよ。アンタも似たようなもんだろうが」
「あぁん?オトモダチの1人もいねぇテメーには言われたくねぇなぁ」
残酷で、冷酷で、極悪非道な最低な男達。
だが自分達の“王”を心底愛していた―――哀しい獣でもあった。