歪んだ月が愛しくて2



もう自分で自分を誤魔化せない。
尊はちゃんと自分の気持ちを自覚していた。
誰の目から見ても分かるように、尊はリカのことを恋愛対象として見ている。





『んんっ、えー…藤岡選手が引いたお題と言うのは………き、“金髪の人”だそうです』





そして、多分リカも…。
少なくともリカが尊を意識しているのは分かる。
そうじゃなかったら借り物のお題で尊を選ぶはずがない。
でもカナちん曰く、リカの好きな人はお兄さんだったはず。
お兄さんから尊に気持ちが傾き掛けているなら俺にもチャンスがあるかもしれない……なーんて、自分が一番分かってるくせによく言うよ。
俺が尊に勝てるわけない。
だって俺にとって尊は“光”なんだから。
リカがまだお兄さんのことを好きでも尊に迫られたらきっと…。



(でも、渡したくないな…)



自分の中で初めて芽生えた感情に戸惑いを隠せない。



「そんなこと、分かってんだよ…。お前達なんかよりも俺の方がずっと、ずっとリツのことを…っ」



大きな音を立てて椅子に座り込む、理事長。



理事長も、多分俺と同じ。
リカのことが好きで好きで堪らなくて、そんなリカをぽっと出の俺達に盗られたくないと思っている。



(俺と一緒…)



でも理事長は俺達の知らないリカを知っている。
子供の頃のリカは勿論だけど、何よりリカが必死になって隠そうとしている何かを知っている。
そして理事長もその秘密を隠すために躍起になっている。
だから俺達からリカを引き離すために態々カナちんを送り込んだり、リカを軟禁するような真似をしてるんだ。
これは勘だけど、多分理事長と頼稀の目的は同じだと思う。
皆してリカの何かを必死で隠している。
誰にも暴かれないように厳重に鍵を掛けて守ろうとしている、俺にはそう思えてならなかった。
だから今回のようなヨージの安易な発言はご法度なんだろう。
触れてはいけないものに触れてしまった代償としてリカに会わせてもらえないとしたら、俺はそれを甘んじて受け入れなければならないのだろうか。



「ねぇ、理事長」



それほどまでにリカの秘密は隠さなきゃいけないようなものなのだろうか。



「リカのこと教えてよ」



でも関係ないよ。
俺が知りたいのはリカの秘密じゃない。
どんなに必死で隠しても俺には無意味だし、リカが誰にも知られたくないなら俺も無理に聞き出そうとは思わない。



「どんなことでもいいから。俺、リカのことがもっと知りたいんだ」



だって、俺が知りたいのはリカ自身のことなんだから。

秘密(オプション)なんて、いらねぇんだよ。


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