歪んだ月が愛しくて2
「ふ、ざけんなっ!!この後に及んで何適当なことほざいてやがる!?」
理事長はカッと目を見開いて怒りを露わにする。
ぶん殴られるんじゃないかって勢いで立ち上がった理事長だけど、不思議と冷静な自分がいた。
「適当と言うなら陽嗣の言葉に過剰に反応したのは何故ですか?未空の言う通り、貴方自身が立夏くんのことを“化け物”だと思っているから陽嗣が何を考えているか理解出来たのではないですか?」
「、」
九ちゃんの参戦に理事長が言葉を詰まらせる。
やっぱり俺なんかの言葉よりも九ちゃんの一撃の方が効くんだよな。さっすが魔王様。
「そんなテメーに陽嗣を非難する資格はねぇよ」
「お、俺は……、リツを“化け物”なんて思ったことは一度も…、」
理事長はいつもの一人称が変わっていることに気付かないほど動揺していた。
「ない、と言い切れるか?」
「、」
その様子からして俺の指摘は間違っていなかったようだ。
「……図星突かれてんのはどっちだよ」
「それ、間違いなく貴方の台詞ではないので黙ってて下さい」
ヨージの奴、全然反省してねぇな。
後で尊と九ちゃんにお説教してもらわないと。
「認めたくねぇならそれでもいい。だがな、俺等は別に今のアイツを変えたくて一緒にいるわけじゃねぇんだよ。テメーの期待を勝手にこっちに押し付けんな」
「……なら、アイツはあのままでもいいって言うのか?お前なら分かるはずだ。……いや、あれを見たお前が何でそんな風に言えるんだよ。普通だったらもっと…」
「テメーの普通で物事を判断すんな。アイツが普通だろうが普通じゃなかろうがどうでもいいんだよ。俺にとって重要なのは、立夏かそうじゃないかってことだけだ」
「つまり、リカなら普通じゃなくても大歓迎ってことね」
「照れ屋ですね、うちの王様は」
「本当、素直じゃねぇな」
「「「お前が言うな」」」
余計なことを言うヨージを黙らせようと脛を蹴ったら、同じタイミングで尊が頭を、九ちゃんが背中を殴っていた。
普段ならこれで大人しくなるヨージではないが、余程理事長のリカを転校させる宣言が効いたようで「オメー等、手加減って言葉を知らねぇのかよ!!」と文句を言うだけで終わった。
暫くヨージには猛省してもらおう。だってこれで本当にリカが転校なんてしちゃったら王様の逆鱗がヨージに一直線間違いなしだもん。俺だって絶対許さないんだから。
「お前はリツなら…、あのままのリツでも本当にいいって言うのか…?」
理事長の声が揺らぐ。
でも視線だけは真っ直ぐに尊を捉えていた。
チラッと、隣にいる尊を見上げる。
「愚問だな」
ああ、やっぱり尊も…。
「“化け物”だろうと何だろうと、立夏は立夏だろうが」
リカのことが大好きなんだね。