歪んだ月が愛しくて2



「カナ、何でお前が知ってんだよ?」

「………調べた」

「どうやって?」

「街に行って情報集めたり、学校の奴等に聞いたり…」

「つまり噂なんだな」

「でも間違ってねぇんだろう?本当のことなんだろう?だからリツは俺達の前からもあの街からも姿を消してこんなところに…」

「それもある。でもそれだけじゃない」



それだけならどんなに良かったことか。
でもそれだけじゃないからこんなにも必死になってリツの存在を隠しているのだ。
チサもカナもその元凶は知っているものの真実を知らない。俺と哀だけが知っている真実を。



「……成程。今の貴方方の話を整理すると、以前の立夏くんには仲間と呼べる人がいたようですね。そして何かしらの理由で仲間を失い、それが原因で姿を隠さなければならなくなった。大方追手から逃げていると言ったところでしょうか。そしてそれ以外にも何者かが立夏くんを狙っている。理由は知りませんがどうやら鏡ノ院が関係しているようですね」

「「「っ!?」」」

「おや、分かり易い反応をありがとうございます」



皇の推察は半分正解で半分は不正解だった。
ただそれを訂正すればその他を肯定することになるため何も言えなかった。



「尊と未空は立夏くんのことが大好きですから立夏くんの気持ちを配慮して本人が言いたくないことは無理に聞かないですし、こそこそと裏で調べたりもしないでしょう。でも僕は違います。僕にとって仲間とは守るべき存在です。他人に一線引いている立夏くんが勇気を出して僕達のことを仲間と認めてくれたからこそ、僕は少しでも彼の憂いを払ってあげたい。それで立夏くんの重荷が軽くなるなら裏で手を回すことも辞しません」



しかしそれを理解していないカナが皇に食って掛かる。



「ハッ、調べるなんてそう簡単に出来るわけねぇだろう」

「貴方と一緒にされては困りますね。こちらにはいくらでもカードは揃っているんです。それに僕は鏡ノ院を傘下に従える皇の人間ですよ。鏡ノ院を探ることくらいわけありません」

「止めろ!そんなことしたらリツが…っ」

「でしたら貴方の口から話してもらえませんか?立夏くんが何を抱えているのか、どうしたらそこまで自分を蔑ろに出来るのか、そして村雨日瀧が何故立夏くんのことを“親殺しの死神”と言ったのか。その疑問を貴方が答えて下されば鏡ノ院への追及はやめましょう」

「、」

「そ、れは…」



痛いところを突いて来たな。
流石は皇の第一継承者候補様だ。
逃げ道を完全に塞いだ状態で目の前に餌をチラつかせ、それ以外の選択肢を選ばせないように仕向けるとは。
覇王が厄介視されている原因の大半は皇のせいと言っても過言ではない。



「ふ、文月…」



カナの瞳が不安げに揺れる。
そんなカナを見て無意識に溜息が溢れる。
我が甥っ子ながら噛み付くことしか脳のない駄犬ぶりに呆れて物が言えない。リツとは大違いだな。


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