歪んだ月が愛しくて2
仙堂の言葉で漸く自分の失言に気付いたチサは、罰が悪そうに覇王から顔を逸らした。
「お前達には関係ないことだ」
当然、俺から話すことは何もない。
話せるわけがない。赤の他人のコイツ等なんかに。
「今更誤魔化したって遅いよ」
「そうそう。そこまで言っといてお預けなんて酷いんじゃねぇの?」
「話を遮ってしまったのは大変恐縮ですが、立夏くんの友人の1人として口を挟まずにはいられなかったものですから」
「何度も同じことを言わせるな。関係ない奴等は口を挟むな。これはこっちの問題だ」
「関係なくないよ、リカは俺達の仲間なんだから」
「リツが言いたくないことは聞かないんじゃなかったのか?」
「聞かないよ。でも今ここにリカはいない」
「詭弁だな。何よりリツが自分からお前達に話してねぇってことは話したくないのと一緒だろうが」
「と言うことは、やはりそれが立夏くんの秘密なんですね」
「さあ、どうだろうな」
案の定、覇王はチサの発言に食い付いた。
内容がリツの話だけに他人事じゃないみたいな顔して嫌なところを突いて来る。
どんなに尋問されようとそう簡単にリツのことを教えてやるつもりはないが、チサの発言をヒントにリツが抱えている闇の輪郭が見えてしまったかもしれない。
「………」
何も言わず、ただただ考え込む神代。
嫌な予感が拭えない。
「さっきから黙って聞いてれば…」
そんな時、カナの不満が爆発した。
「勝手なこと言ってんじゃねぇよ。リツがお前等の仲間?そんなのただお前等が勝手に言ってるだけだろう。どうせ嫌がるリツを無理矢理生徒会に引っ張って、権力を武器に逆らえなくさせて縛り付けてるに決まっている」
ああ、カナの不満はそっちか。
昔からリツ一筋だったカナは俺のせいで別々の高校に通わされた挙句、いざ同じ高校に編入したら生徒会に捕まって碌に話すことが出来ず色々と鬱憤が溜まっていたんだろう。
そう言えばカナに覇王のあることないことを吹き込んだのは俺だったな。
「何言ってんのカナちん。俺達は本当に…」
「有り得ねぇんだよ!あのリツがまた仲間を作るなんてっ。一度失ったものにまた手を伸ばせるほどアイツは強くねぇんだよ!」
『アイツの弱いところを突いて俺等から引き離すつもりだったみてぇだが、生憎テメーが思っているよりアイツは弱くねぇよ』
神代に言われたことを思い出す。
真逆の思考回路に思わず吹きそうになったが、やはり血縁者なだけあって俺とカナの思考は似ているらしい。
それにしてもチサに続きカナの奴まで余計なことを喋り過ぎだ。
これじゃあ突っ込んでくれと言ってるようなものじゃねぇか。
「……“また”って何よ?それじゃまるでりっちゃんが前に仲間を失ったみてぇな口振りじゃねぇの」
「赤の他人のお前等に教えてやる義理はない」
カナは知ってたんだな。
リツがアイツ等の元から去ったわけを。
そしてリツの正体があの白夜叉だと言うことを。
俺から話した覚えはなかったんだがな。