歪んだ月が愛しくて2
「……俺、別に我孫子と仲良くないんだけど」
話したのも数回だけだし。
「嘘吐いてんじゃねぇ!だったら何で我孫子さんはお前に手を出すなって言うんだよ!?」
「どうせお前が我孫子さんに泣き付いて頼み込んだんだろう!」
「権力者に媚びて自分の身を守るなんてやることが卑怯なんだよ!」
我孫子が、俺を…?
どう言うことだ。
我孫子が俺に手を出すなって指示していた?
何で?何のために?
………分からない。
と言うことで考えても仕方ない。
頭の隅っこにでも置いておこう。
「てか、お前があの“オタクヤンキー”ってことは藤岡叶威と兄弟なのか?」
「このブスとアイツが?似てねぇな」
「本当に兄弟かよ?」
カナの名前に思わず反応した。
「……それがどうした?」
「お前等兄弟は揃いも揃って目障りなんだよ!何が“人間のクズ”だ!俺達は間違ったことなんて言ってない!」
「そうだ!何も知らねぇくせに知ったようなこと言いやがって!」
……思い出した。
コイツ等、あの時西川くんに絡んでた野球部3人組か。
通りでカナを目の敵にするわけだ。
「兄貴が兄貴なら弟も弟だな」
「ああ、蛙の子は蛙って言うしな」
「あ?」
俺が低く唸るような声を出して凄むと、男達はビクッと肩を揺らして息を飲んだ。
「……カナが蛙?ふざけんなよ」
俺が蛙なのは認める。
でも俺と血の繋がってないカナが俺と一緒なわけがないんだ。
「テメーが気に食わねぇからって誰彼構わず噛み付いてんじゃねぇよ。暴力で訴えるのは誰でも出来るんだよ、この低脳猿共が。それでも本当にGDか?」
「っ、ざけんな!」
「GDナメんじゃねぇぞ!」
「ナメてんのはテメー等だろうが!テメー等のその幼稚な言動がGDを安く見せてるってまだ気付かねぇのか!?」
「っ!?」
我孫子のことは好きじゃないけど、嫌いでもない。
そして表向き反生徒会組織と掲げるGDは学園生活において必要な存在だ。
今でこそGDは生徒会のやることなすことに否定的な組織だと思われているが、本来のGDの役割は生徒会の間違いを正すことじゃないだろうか。
少なくともコイツ等のように自分達の気に入らない奴を袋にすることじゃないはずだ。
「GDってのは覇王のやり方が気に入らなくて作った組織じゃねぇのか?覇王が道を踏み外した時にぶん殴ってでも矯正してやるのが本来のGDじゃねぇのかよ?テメー等がやってることは本当にGDの正しい姿って言えるのか?」
「、」
「胸張って正しいと言えるならそれでいい。テメー等の根性が腐ってようが何だろうが俺には関係ねぇからな。でも今のテメー等を見て我孫子は何て言うだろうな。よくやったって褒めてくれると本当に思ってんのか?」
「それは…っ」
(実際、我孫子がどう考えてんのかは知らねぇが…)
男達の顔色が次第に曇っていく。
大して考えもせずにただ感情の赴くままに暴れたいだけ暴れて気分を晴らしたかったんだろうが、喧嘩を売る相手は選んだ方がいい。
相手が俺だったから良かったものを、もし“B2”に喧嘩売ってたらこんなもんじゃ済まなかっただろう。
「間違ったことをしたと思うなら誠意を見せろ。今のままじゃテメー等にGDを名乗る資格はねぇよ」
そう言い残して自分の教室に向かおうと歩き出した。
その時。