歪んだ月が愛しくて2
パチパチパチ、と。
背後からやる気のない拍手が聞こえる。
「流石だねりっちゃん。やっぱり俺いらなかったじゃん」
……忘れてた。
この人まだいたんだっけ。
「……先に帰ってもらって良かったんですけどね」
「そんな薄情なこと出来るわけないっしょ、俺達ナカマなんだし」
心にもないことを。
一歩後ろで傍観してたくせに何が薄情じゃないだ、白々しい。
突如鳴り響く陽気なメロディーが空気を裂く。
陽嗣先輩は面倒臭そうにポケットからスマートフォンを取り出した。
「あーん、何だよお猿。どしたー?」
どうやら電話の相手は未空のようだ。
「あん?もう授業始まってるって?紀田が煩ぇから早く来いって………ああ、ちょっと面倒なのに捕まっちまってよ。まあ、そっちはりっちゃんが片付けてくれたから問題ねぇよ」
そう言えば紀田先生の授業はサボり厳禁だったな。
てか、GDに絡まれたこと話すのかよ。
面倒臭ぇこと言われそうだから秘密にしておこうと思ったのに。
「ちゃんと一緒にいるから心配すんなって。……ああ、分かった分かった。安心しろよ、ちゃんと教室まで送り届けてやっから」
適当な相槌の後、陽嗣先輩は強制的に通話を終わらせてスマートフォンをポケットに仕舞った。
「と言うことで、猿が煩ぇから教室までお供するぜ」
「……暇なんですね、陽嗣先輩って」
「ククッ、この俺にエスコートされてそんな顔するのはりっちゃんくれぇだよ」
今の笑い方は、本物。
「にしても、何でアイツ等に手加減したの?りっちゃんならあの程度の奴等を沈めるのなんて訳ないっしょ?それとも態と意識失わせないように急所を外したとか?」
「………」
でもこっちの笑顔は、偽物。
使い分けが出来るなんて器用なものだ。
本当、感心するよ。