歪んだ月が愛しくて2
「おや、何の話をしてるんだい?」
その声に現実へと引き戻される。
アゲハは俺の頭に頬擦りしながらうっとりとした視線を九澄先輩に注いでいた。
「……別に。てか人の頭の上でニヤニヤすんな。うざい」
「それは無理な相談と言うものだよ。何たって僕の敬愛する駒鳥と愛しのプリンセスが目の前にいるのだからね、ぐふふっ」
「キモイ」
「相変わらず鬱陶しいですね。その暑苦しい視線と髪型どうにかなりませんか?何でしたら僕が止めを刺して差し上げますよ」
「申し訳ない我が愛しのプリンセス。しかしこれは君への愛故。どうか許してもらえないだろうか」
「許しません。とっとと立夏くんから離れて下さい」
「それはヤキモチかな。それとも今流行りのツンデ…」
「いいから離せや!」
「がはっ!」
あまりの暑苦しさと気持ち悪さに俺はアゲハの鳩尾に本日2回目の鉄拳をお見舞いすることとなった。自業自得だ。
「立夏くん大丈夫ですか?この変態に何かされませんでしたか?」
「大丈夫です。慣れてますから」
「それもどうかと思うけど…」
「気を付けて下さいね。立夏くんにもしものことがあったら尊が黙っていませんから」
「大袈裟ですよ。会長が俺のことに口出しするはずないじゃないですか」
「だと良いんですが…」
「え?」
「いえ、何でもありません。それはそうと立夏くんは九條院くんと親しいんですか?」
九澄先輩は床で伸びているアゲハを指差してそんなことを言う。
「アゲハと、ですか?別に親しいって言うか一応C組の寮長ですからそれなりに話はしますけど」
「それだけですか?」
「それだけって、それだけですけど…」
俺の返答に九澄先輩は「そうですか」と言って微笑んだがそれが納得したと言う意味の言葉ではないことはすぐに分かった。
「……あの、何かあるんですか?」
「いえ、そう言うわけではないんですが…」
「が?」
「ただ立夏くんと九條院くんのやり取りがとても親しげだったので少々勘繰ってしまいまして」
勘繰る?
……まさか。
「九澄先輩、それって…」
「嫉妬かい?」
「………」
「………」
「………」
「おや、言葉も出ないとは図星のようだね」
「はぁ…」
「……KY」
「アーゲーハー…」
ギュッと、拳を握る。
「駒鳥もそう思うだ…「誰がお前に嫉妬なんかするかぁあああ!!」