歪んだ月が愛しくて2



「それでは会議を始めます」



会議は九澄先輩の司会で始まった。
実行委員会とは体育祭の裏方的存在で、いかに体育祭をスムーズに進行させ、安心安全で正々堂々とスポーツマンシップに則った競技を行うために作られた組織である。
つまり実行委員会の役目は、体育祭の司会進行と競技に必要な用具の運搬、そして救護者の確保が求められる。
その細かなところを一つ一つ丁寧に確認して各クラスの役割を決めるのが、今日の会議の目的だと九澄先輩が冒頭で話していた。
また学園内における全ての決定権は生徒会長である会長に任命されているが、体育祭や文化祭に関してだけは実行委員会に任されているとかで、謂わば学級委員の延長みたいなものだから各クラスの学級委員が抜擢され、今回ばかりは生徒会が表に出ることはないらしい。
その中でも実行委員会を纏めるのは3年S組の学級委員長。つまり、九澄先輩であった。



「大まかな説明は以上です。それでは司会進行を…」



体育祭はS・A・B・C・Dの5つのチームに別れて競い合う。
その5つのチームで1位からビリまで決めて、1位のチームには豪華な景品が贈られる。
しかもチーム優勝を逃したとしても一番ポイントを獲得したクラスや、理事長や来賓客の目に止まったクラスには特別賞がもらえるチャンスもある。
金持ち連中がそんなもので釣られるはずないと思いきや、これが結構皆躍起になって優勝を獲りに来るみたいで怪我人が出ることもあるらしい。



「優勝賞品は…―――」

「それでは去年と同じでは?」

「もっと生徒達の興味を引くものでないと」



(結構真面目なんだな、皆…)



そんな5つのチームの大将は各寮長が務める。
S組は九澄先輩、C組はアゲハ、他のクラスの大将は覚えていない。



「最後に質問のある方はいますか?」



え、もう最後?



よく考えたらこれって俺が出席する必要あったのかな。
特に発言する必要もないからただ話を聞いて置けばいいだけだし、本来のみっちゃんだけでも事足りた気がする。



「はい」



そんなことを考えていると、不意にみっちゃんが手を挙げた。


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