歪んだ月が愛しくて2
「……ねぇ、君達っていつもそうなの?」
「何が?」
俺がアゲハの鳩尾に一発入れた後、みっちゃんは不審そうな表情を浮かべながら疑問符を投げ掛けた。
「君と九條院先輩って仲が良いんだか悪いんだかよく分からないんだけど」
「同感ですね」
「心配無用さ。僕と駒鳥は目に見えない絆で固く結ばれているからね」
「あ、復活した」
「一生地に伏せていればいいのに…」
「………えっ!?」
「ふふっ、冗談ですよ」
「で、ですよねっ」
全然冗談に聞こえませんけどね!
「ねぇ、皇先輩っていつもああなの?」
するとみっちゃんが小さな声で俺に耳打ちする。
「ああって?」
「だからいつもあんなに真っ黒なのかって聞いてんの」
「え、いや、そんなことないと思うけど…」
偶に大魔王様が光臨する時もあるけど…、とは本人の前だから死んでも言えない。
「ふーん…、じゃあ九條院先輩限定ってわけか。噂通りだね」
「噂?」
「噂って言うか多分本当のことなんだけど、九條院先輩が皇先輩に告白したのは知ってる?」
「そう言えば誰かがそんなこと言ってたかも…」
あれ、本人からだっけ?
「その告白を皇先輩が断ったの。でも九條院先輩はあの通り諦めが悪いからそれ以来顔を合わす度にあの調子らしいよ」
「確かに諦め悪そう…」
九澄先輩も大変だな。
あれを毎回…、俺だったら耐えられないな。
「……ま、気持ちは分からなくないけどね」
「え?」
「本当に好きなら簡単には諦められないだろう」
そう言ってみっちゃんは遠くを見つめた。
スッと目を細めて、まるで手の届かない誰かを想うように。
「君は、違うの?」
「………」
その目に、責められているかと思った。
否定も肯定も出来ない中途半端な想いは、みっちゃんの「好き」と比べるに値しない。きっと同じ土俵に立つことさえ許されない。
そう言われている、気がした。