歪んだ月が愛しくて2



頼稀Side





バコォーンッ!!



「よっしゃー!ストライク!」



天井に向かってガッツポーズを決める汐は本日3回目のストライクを出して戻って来た。



「汐くんまたストライク出しの!?これでもう2回連続じゃん!」

「へっへーん!凄いだろう!これからもっと記録伸ばしてやるから覚悟しろよ!」

「へぇ、汐ってボーリング得意なんだ。凄いね」

「と、得意ってほどじゃないけど、よく遊びに来てたから…っ。り、立夏くんこそ初めてなのに連続スペア出すなんて凄いよ!」

「そうなの?俺イマイチルールが分かんないんだよね」

「じゃ、じゃあ、分からないことがあったら何でも聞いてよ!俺、こう言うアクティビティ系よくやるから教えられることとかあると思うし!」

「ありがとう汐。頼りにしてるよ」

「っ!?」



(バカめ…)



鼻の下伸ばしっぱなしの汐と、汐の下心に微塵も気付いていない様子の立夏。
そんな光景を目の前で見せられて、正直顔を上げるのも恥ずかしいくらいだ。



俺達は二つのレーンを使ってボーリングをしている。
一つのレーンには4人までしか遊べないため立夏・汐・葵チームと、俺・希・御手洗・遊馬の2チームに別れている。
とは言え勝負はあくまで個人戦だ。スコアが一番悪い奴が全員分の飲み物を奢ると言った何とも可愛らしい罰ゲーム付きの。



「汐の奴、調子に乗ってますね…」

「ああ」

「俺があっちに行った方が良かったんじゃないですか?」

「……いや。未空が来た時に立夏と別の組だと煩ぇこと言いそうだからこのままでいい」

「汐と未空をくっ付けた方が余計煩いのでは?」

「だとしても仕方ねぇだろう、今日の主役は未空なんだから」

「フッ、そうですね」

「何笑ってんだよ?何か可笑しなこと言ったか?」

「いいえ、全く」

「………」



生温かい薄ら笑いを浮かべる、遊馬。

それがどうも居心地が悪くて遊馬から視線を逸らすと、突然横からガバッと左腕を掴まれた。



「頼稀!俺今スペア取ったんだよ!見てた?見てた?」

「……見てない」

「えぇー!何で俺の勇士をちゃんと見とかないんだよ!遊馬と話してばっかいないでこっちにも集中しろよな!」

「あー…分かったから腕を引っ張るな。次はちゃんと見ててやるから」

「そう言っていつも聞き流す。そんなに俺と話すのつまんないわけ?」

「誰もそんなこと言ってないだろう。それに聞き流してるつもりもない」

「どうだか。車の中で鏡ノ院の話が出た時は心ここに在らずだったけど?」

「あれは別に…」





『まあ、そうやって括られるのは仕方ないけど、俺的にはあれと身内なんて死んでも御免だよ』





地雷を踏んだ自覚はある。
でも立夏に鏡ノ院の話を聞かせたくなかった。
出来ることなら立夏の人生に一生関わって欲しくないと願うほどに、立夏から鏡ノ院の存在を遠ざけたかった。



それなのに、態々自分からそこに飛び込むとは…。





『万が一は万が一だよ。自分の身は自分で守らないとね』





万が一って何だよ?

お前は一体何をするつもりなんだ?


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