歪んだ月が愛しくて2



御手洗の笑い声に釣られた立夏達が「どうしたの?」と疑問を抱きながら寄って来たが、俺は何でもないと言い張ってボールを手に取り10本のピンに向かって鉄の玉を思いっきりぶん投げた。
人の恋路を邪魔したKY野郎共への怒りを込めて投げた結果は皮肉にもストライクだった。



バコォーンッ!!



「へぇ、やるじゃん」

「流石頼稀くん」

「煽てても無駄だ。よくも邪魔してくれたな、このツケはデカいぞ」

「別に邪魔するつもりはなかったんだけど、君達のやり取りがあまりにもむず痒くて耐えられなかったんだよ」

「頼稀くんは見た目によらずピュアなんですね」

「喧嘩売ってるなら今すぐ買ってやる」

「僕が君とまともに喧嘩出来るわけないだろう。てか、ぶっちゃけ君達ってどうなの?付き合ってんの?」

「……付き合ってねぇよ」

「何で?どう見ても両想いじゃん」

「付き合ってるって言われても全然違和感ないですよ」

「それでも付き合ってない。俺とアイツはただの幼なじ…「よっ、よよよりきぃぃいいい!!」



そう言い掛けた時、休憩所の方から希が俺の名前を叫びながら走って来た。



「どうした?そんなに急いで何かあったのか?」

「そ、それが、今未空が着いたんだけど…」

「アイツやっと来たのか」

「仙堂のくせに1時間以上も遅刻するとか何様だよ」

「とか言ってちゃんと待ってたくせに」

「はぁ!?この僕があんな奴を待つわけないだろう!」

「はいはい」

「で、未空は今どこにいるんだ?」

「そ、それが…っ」

「お待たせ!遅くなってごめんね!」



何故か動揺した様子の希を不審に思っていると、入り口の方が騒がしくなったと同時に聞き慣れた声が飛んで来た。

やっと主役の登場か、と暢気に入り口の方に視線を向けると。





………は?





ガンッと。

誰かが床にボールを落とした。



「み、未空…、何か後ろに憑いてるんだけど…」



そう言って未空の後ろの人物に向かって指を差した立夏は、心底嫌そうな顔をして口元を引き攣らせた。
当然俺も彼等を歓迎することは出来なかった。いや、寧ろ帰れ。今すぐに。



「ごめん、リカと遊びに行くって言ったら無理矢理ついて来ちゃって…。俺のスタンドだと思って今日だけ我慢してくれない?」

「結局幽霊扱いかよ」

「ストーカー扱いされるよりいいじゃないですか」

「そうそう。好きな子の後を追い掛けてここまで来たなんて知られたらマジでストーカーだもんな」



覇王の登場により周囲から好奇の目に晒される。
フロアにいる女共は獲物を狙う肉食動物みたいに目をギラつかせ、男共は羨望と妬みの視線を送っていた。
しかし覇王はそんな周囲の視線を気にも止めず当然の如く立夏の傍に群がり始めた。



(マジでストーカーじゃねぇか…)



至極迷惑そうな表情を崩さない、立夏。



それもそのはずだ。
昨日の今日で何事もなかったかのように振る舞えるほど立夏は寛容な奴じゃない。



「え、何で先輩方がここに…?」

「げっ、最悪…」

「どうやら未空の保護者面して本命は立夏くんみたいだね」

「昨日あんなことがあったんだから今日くらい距離を置いてあげてもいいのに…。しつこい男は嫌われるって知らないのかな?」

「み、尊様の私服姿も素敵過ぎる…っ!!」



ポンコツめ。


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