歪んだ月が愛しくて2



「突然お邪魔してすいません。もしご迷惑じゃなければ僕達も混ぜてもらえませんか?」



すいませんって言う割には図々しいな。



「え、いや…、九澄先輩は迷惑じゃないですけど…」

「あ?九澄は良くて俺は迷惑だって言いたいのか?」

「自覚してないんですか?こんな目立ってるのに?」

「気にするな」

「いや気になるわ。お忍びで有名人か何かが来たのかと思ったんだけど」

「まあ、みーこの場合は似たようなもんだけどね」

「りっちゃん、俺も迷惑?」

「はっきり言った方が良ければはっきり言ってあげますよ」

「大丈夫、スゲー伝わって来たから」



どうやら覇王は自分達が歓迎されていないことを自覚していながらもここまで来たようだ。
そうまでして未空の機嫌を取りたいのか、将又立夏に嫌われたままでいたくないのか。
どちらにせよ覇王のためにお膳立てしたわけではないのに、我が物顔でこの場に溶け込もうとする覇王は完全に居座る気満々だった。



「あの、ここは皆さんが遊びに来るような場所じゃないのでは…?」



それでも立夏はどうにかして覇王3人をこの場から遠ざけたいようだ。



「そんなことねぇよ。俺は尊と何回かやったことあるし、東都にもしょっちゅう遊びに来てるしさ」

「へぇ…」



まあ、気持ちは分かるが、あの覇王がそうすんなりと帰ってくれるとは思えない。



「実は僕ボーリングって初めてなんです。陽嗣達から話だけは聞いていてずっとやってみたいと思っていたんですけど、中々機会に恵まれなくて…。ですから今日立夏くん達に同行したいと言い出したのは僕なんですよ」

「え?九澄先輩が?」

「はい。立場上中々私的な外出が出来ないのでこう言う繁華街に来たのも今日が初めてなんです。お恥ずかしい話ですけど」

「い、いや、そんな恥ずかしくなんて…」

「今日は偶々予定がなく、やっと皆で遊べると楽しみにしていたんですが…、でも皆さんの邪魔をしては申し訳ないですよね」

「あ、いやっ」

「困らせてしまってすいません。これ以上しつこくして立夏くんに嫌われたくないので僕達は帰り…「お、俺、九澄先輩と一緒に遊びたいですっ!!」



面白いくらいすんなりと皇先輩の策略に嵌った立夏は、殊勝ぶって帰ろうとする皇先輩の腕を掴んで動きを止めさせた。



「いいんですか?」

「はい!俺もボーリングって初めてだったんですけど、凄い楽しいんで皆で一緒にやりましょう!」

「でも僕達がいると迷惑になるんじゃ…」

「そんなことありません!俺も九澄先輩と一緒にボーリングやりたいです!」

「ふふっ、ありがとうございます」

「じゃあまずは靴を履き替えましょうか」

「色々と教えて下さいね、立夏くん」

「いやいや、俺も初心者ですから」



そう言って立夏は皇先輩の腕を掴んだまま靴を履き替えに行った。



(立夏の奴、簡単に絆されやがって…)



「リカを手玉に取るなんて九ちゃんやるぅ〜」

「九澄様々だな」

「チッ…」



仕方ない。立夏と未空が覇王の参加を認めた以上、いくら俺達が拒否したところで無理矢理にでもついて来るのがオチだろう。既に若干1名は目をハートにして喜んでるし(※ポンコツ御手洗)。



「未空、ついて来たもんは仕方ねぇが、連れて来るなら来るで事前に連絡入れとけよ」

「ごめん。マジで最初は連れて来る気なかったんだけど、リカと東都に行くって言ったらみーこが自分も行くって聞かなくてさ」

「別にアイツがいようがいまいが関係ない。偶々予定がなかったから暇潰しに街に来ただけだ」

「へぇ…、だったら途中で立夏が抜けても文句ないですよね?」

「あ?どう言う意味だ?」

「別に、そのままの意味ですよ」

「………」

「え、リカ途中で抜けるの?何で?」

「例えばの話だ。そんなことよりお前も早く靴借りて自分のボールを選んで来いよ。遊ぶ時間なくなるぞ」

「え、靴ってどこで借りるの?ボールって全部一緒じゃないの?」

「あー…そう言えばお前も初心者だったな」

「仕方ねぇな。オメーの面倒は俺が見てやるよ、行くぞお猿」

「あ、おい、待てよヨージ!ほらみーこも行くよ!」

「煩ぇ、引っ張るな」



覇王の登場で立夏が抜けるのはより難しくなった。
元々立夏には葵のダチと接触して欲しくなかったからこれで立夏が大人しくしてくれれば御の字なのだが、あの立夏がすんなりと俺の言うことを聞いてくれるとは到底思えない。



「はぁ…」



どうしたものか。


< 554 / 651 >

この作品をシェア

pagetop