歪んだ月が愛しくて2
「冗談だよ。あれはこっちが悪かった。ほんの遊びのつもりだったんだが、お前の反応が予想外過ぎて面白くてな」
「……で?」
「止めるの忘れてた」
「死ね」
「だから冗談だって。そう拗ねんなよ」
我孫子は俺の手首を掴むと掌の上に何かを乗せた。
「それやるから機嫌直せよ」
掌を開くと、そこには大きな飴玉があった。
ワーイ、ウレシー……じゃねぇよ!!
どいつもコイツも人をガキ扱いしやがって、大して年齢変わらねぇだろうが!!
そんな不満を募らせながらいつどこで爆発させてやろうかと思いを巡らせていると、我孫子が俺の耳元でとんでもないことを口走った。
「ヤニの代わり」
「、」
予想外の言葉に驚きを隠せない。
会長に引き続きまさか我孫子にまで気付かれてたとは、正に獣並みの嗅覚だな。
我孫子は俺の反応に満足すると、興味が失せたようにドアの方へ歩いて行く。
「我孫子くん、どこへ行くんですか?」
「ちょっと一服しに」
「この後は寮長会議です。ちゃんと戻って来て下さいね」
「へいへい」
我孫子は「またな」と俺に手を振って会議室から出て行った。
また…、なんて俺的にはない方がいいんだけどな。
「全く、未成年の分際で」
「九澄先輩も大変ですね…」
「彼は……、いえ、彼もまた問題児ですからね」
「も?」
「立夏くんの傍にもいるじゃないですか、問題児達が」
「あー…」
思い当たるのは彼等だけ。
あれをそんじょそこらの問題児と一緒にするとは、流石九澄先輩だな。経験の差を感じるよ。
「立夏くんはこれから生徒会室に行きますか?」
「はい。未空と約束しましたから」
「僕はこれから寮長会議なので少し遅れます。未空達にもそう伝えて置いて下さい」
「分かりました」
「それではまた後で」
「はい。行ってらっしゃい」
そう言うと九澄先輩は少し驚いた様子で目を瞠った。
しかし、すぐにいつもの笑顔に戻って。
「行って来ます」
それだけ言うと九澄先輩は会議室から出て行った。
寮長も大変だなと思いながら、俺も生徒会室に向かおうと会議室を出ようとした時、またもや邪魔者が俺の行く手を阻んだ。