歪んだ月が愛しくて2



「どう、なってんだ…」



店長の困惑する声に、そりゃそうだと内心思う。



俺をビビらすために呼んだはずの人間が、その俺に跪いてんだもん。

その反応が普通だよ。



でも目の前にいる獣は店長の独り言なんて気にも止めていない様子で、俺が“ナツ”とその名前を呼ぶと、ナツは俺が被っていたキャップとマスクを取りそれらをテーブルの上に置いてジッと俺の顔を凝視した。
その直後、ナツは俺の身体に飛び付いて逃がさないようにしっかりと腕を回した。



「シロ…」



ギュッと、俺を抱き締める腕に力が入る。
ナツは俺の肩口に頭を擦り寄せ、甘えるような仕草を見せた。



「……不安に、させた?」



そう尋ねると、ナツは首を振って否定した。



「心配、した…」

「……そっか」



珍しく素直な返答にナツの限界が見えた。

何ともなさそうに見えても、ナツは人一倍孤独を恐れているから…。

いくらアイツに預けていたとは言えやっぱり一言言って置くべきだったかな。



「ごめんな…」



よしよしと、ナツの頭を撫でて自己満足に謝罪する。



謝罪なんて、狡いよな。

だって俺が謝ればナツはきっと許してしまうんだから。



「……もう、いい。シロが無事なら、それでいい」



(本当、ごめんな…)



久しぶりの体温を懐かしむように、逃がさないように、ナツがぐりぐりと頭を押し付けて来るものだから思わず口元が緩んだ。



………可愛い。



普段は素っ気ないくせに、偶に2人っきりになると甘えて来るんだよな。
出会った時と比べて顔付きは大分大人っぽくなったが、こう言う内面の可愛さは全然変わってなくて安心した。


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