歪んだ月が愛しくて2
「シロ、怪我はない?」
「怪我?」
「………恐極の」
ああ、そのことか。
「やっぱナツも知ってたか…」
「アイツの補佐みたいなことやってるからね、不本意だけど」
「もしかして、ナツもアイツと一緒に乗り込んだの?」
「俺はアイツを回収しに行っただけ。恐極組の連中を殺ったのはアイツ1人だよ」
「そう…」
1人で乗り込んだ上に組員を全員始末するなんて、いくらアイツが規格外なスペックでも無傷で済んだはずがない。
それこそ俺なんかよりも重症だったはずだ。
……ああ、嫌だな。
アイツが怪我すんのも、手負いのくせに平気なふりして笑うのも、見たくない。
ましてやそれが俺のせいなんて、どんな顔してアイツに詫びればいいのか分からない。
つくづく嫌になる。
自分と言う存在がどれほど周りに迷惑を掛けているか、改めて認識させられる。
『貴様のせいで、あの子は死んだんだ』
俺を蔑み、非難する声が、脳内で延々とリピートされる。
否が応でも記憶の蓋が抉じ開けられる。
『お前の居場所はそこじゃない。お前は鏡ノ院家の人間だ』
………そう、なのかな。
やっぱり文月さんの言ってたことは正しいのかもしれない。
何が飼い主だ、偉そうに。
自分のペットを傷付ける飼い主は、もう飼い主なんかじゃない。
人間のクズ、それ以下だ。
(そんなの、アイツと同じじゃないか…)
だから、一度は手放した。
それなのに俺とヤエを繋ぐスマートフォンが、いつまでも俺の未練を断ち切ってくれなかった。