歪んだ月が愛しくて2
「そんなのバカげてる!だって俺は、」
「まだ気にしているのかい?」
「、」
そんなの、気にしない方がどうかしてる。
いくら昔のことでもなかったことに出来るわけがない。
「言ったはずだよ、僕等は君を恨んでいないと。あの時の“B2”は弱かった。ただそれだけのことさ」
ましてやこんな風に“B2”である彼等と関わってしまったら簡単には忘れられるわけがない。
「自分を責める必要はない。あれは君のせいじゃないんだ」
そう言ってアゲハは繰り返し俺に言い聞かせる。
まるで俺に都合の良い妄想を植え付けるかのように。
「……違う」
違う。
あれは間違いなく俺のせいだ。
「もう自分を許してあげてもいいんじゃないのかい?」
「………」
アゲハの言葉を否定するために無言で首を左右に振る。
「君は何も悪くない」
違う。
「あの日“B2”を襲ったのが君じゃなかったとしてもきっと結果は同じだった。当時の“B2”は弱かった。だから僕等は君に負けたんだ」
違うんだ。
「僕等は、君を恨まない」
分かってんだよ。
今更後悔したところで過去は変えられないことくらい。
「決して憎まない」
「………、まれ」
それでも悔やんでも悔やみきれない。
過去の自分を穿繰り返されているようで情けなくて惨めな気分だった。
自分を許せだって?
冗談じゃない。
「君のせいじゃない」
「、」
許すなんてとんでもない。
そんなことしたらきっと俺はもうどこへも行けない。
自分の足で立ち上がることさえ出来なくなってしまうかもしれない。
このぬるま湯が俺を殺す。
ジワジワと、俺の首を絞めようとする。
「罪悪感」と言う名の凶器が俺の首に巻き付いていた。
「君は何もわる…「黙れって言ってんだよ!!」
感情に任せてアゲハの身体を思い切り突き放して怒声を浴びせた。
そんな俺達の様子に気付いた周囲は途端に言葉を閉ざし、室内は息苦しい静寂によって支配された。