歪んだ月が愛しくて2



「アイツに何の用?てか俺とアイツをセットみたいに言うな、気持ち悪い」

「セットみたいなもんでしょう今は。それに知ってるんだよ、ヤエちゃんが密かにシロと繋がってること。ヤエちゃんは隠してたけど、本当はシロがどこにいるのかも知ってるんじゃない?」

「確かに今の俺はヤエの補佐みたいなことをさせられてるが、それはあくまで仕事上のことだ。アイツのプライベートなんか興味ねぇよ」

「でもシロに関しては別でしょう」

「………」

「もしヤエちゃんが俺達に秘密でシロと連絡を取っていたら…、ナッちゃんならヤエちゃんの部屋に盗聴器仕掛けてでも確認したいところだよね。だってナッちゃんにとってシロは誰よりも大切な飼い主様だもん。そんな大切な存在を喧嘩と腰振ることしか脳のないキチガイ野郎が独り占めしてると知ったら邪魔してやろうって思うよね。だからナッちゃんは自分の立場を利用してヤエちゃんの傍にいることで2人の接触を邪魔しようとしてる。……いや、若しくは自分もそのおこぼれに預かろうとしてるのかな?自分にはシロを繋ぎ止めるだけの力がないって端っから諦めてんでしょう?」

「っ、」



カッと、頭に血が上ったナツが高屋の頬を殴った。
大の字で床に倒れた高屋に更に追い討ちを掛けるようにナツの両手が高屋の首に添えられた。



「……それ以上無駄口を叩いてみろ。本当に殺すぞ」

「ハッ、図星」

「殺す」



ナツの両手に力が入る。
一瞬だけ高屋が顔を顰めた。



「殺す、殺してやるっ」

「ははっ、出来もしないくせに…、」



ギチギチと、ナツの細長い指が高屋の首に食い込んでいく。
それでも高屋の表情は緩く笑ったまま。
そんな一部始終を見ていた俺達の中には「な、何してんだよっ!?」とか「ちょ、ちょっと、これは流石にヤバくない…?」とか様々な声が上がったが誰1人止めに入ることが出来なかった。
ごくりと、喉が鳴る音が聞こえる。
高屋の首に手を掛けた瞬間、ナツの目が、態度が、立ち振る舞いが、一気に重苦しいものへと変化した。



漸く彼等は感じ取ったのだろう。

目の前にいる獣の異常性に。


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