ビター・ハニー・ビター
「〜〜っ、当たらせてよ!」
「近所迷惑だから、帰って」
ぐうの音も出ないのが悔しくて、何とか頭の引き出しから反論を見つける。
「あのねえ、仮にも女性を立たせたままって、あんたモテないでしょ、いや、モテるわけないよね。とりあえず、別れた責任あるし、この件は説明してもらうからね!?いや、この際専務の説明はどうでもいいから、愚痴ぐらい聞きなさいよ」
「…別れたのと、何がどう責任…」
嫌そうに呟くその無表情な顔に「は?」と睨みつけると「まじで面倒…」その男は見えないため息を吐くと、背中をドアに付ける。
入れの意思表示なのだろう、それを許されるので「お邪魔します」と小さくつぶやく。
言っておくけれど、あたしは堅実な女。
何も起こるはずが無かった。だから足を踏み入れたのだ。
言い訳をすれば、ただ、今日は最悪な事が重なりあって出来た日だってことを、あたしはほんの少しだけ、忘れていた。
それは理由とも言えない、取るに足らない些細なもの。