ビター・ハニー・ビター
そもそも、なんだ。
専務が言った"行けばわかる"は、あたしがこの男の家政婦代わりってこと?
は?信じられない、あたしが世話焼きロボット係ってこと?だれがタヌキだって?便利道具なんて持ってないわよ。
……明日絶対に専務を問いただす。そんで、彼氏と別れたツケに良い男紹介してもらう。
今日は些細なことにツッコミを入れる日なのか、そうか、これが厄日ってやつか。
「ん、あれ?」
言ったそばから、小鳥遊棗は紙を食べさせている途中だったのか、シュレッダーのダストボックスを強引に引き抜いた。
……ガコン、という音と共に、盛大にゴミ屑が床に散らばった。
うそでしょ、ドジっ子かよ。
遂に頭を抱え、本日二度目の大きなため息を吐き出す。
「ちょっと待って、落ち着こう」
「落ち着いてるけど」
「いや、ごめん、あんたは少し焦ろっか」
今度は小鳥遊棗の動きが止まり、「あせる」と手を顎に乗せて考え始めてしまった。なんて生産性のない会話。やってらんない。
「掃除道具どこ!?」
「え?どこだっけ」
「ああ、もう!!あんたはソファに座って!」
「たしかこの辺に……」
座れって言ってるのに、小鳥遊は不安定な足場を頼りに背伸びして棚の上部を探し始めるので、棚に置かれた資料らしきものがザザーっと音を立てて落ちてしまった。
高い場所に掃除用具なんてあるはずが無い。
「ハウス!!!」
ビシリとソファーを指さして、家主を叱りつける。