ビター・ハニー・ビター
彼とは超順調だったよね?
あたしがいくら仕事でドタキャンしても笑って許してくれるやさしい彼だったし、連絡はすごくマメにくれる人だったし、定期的にプレゼントもくれたし……て、終わった恋愛を思い出すのは、絶対に、ノー!
「棗が独り立ち出来るようになったら、良い男紹介してやるって」
そんなことを思い返していれば、専務が聞き捨てならないことを口走る。
「〜〜っ、聞きましたからね!?芸能関係者でお願いしますよ!?」
「息子の周りクズしかいねーって話だけど〜。じゃ、あとで」
そう言い残すと専務は灰皿へ吸殻を落とし、喫煙室を出ていくので「お疲れ様です」と見送る。
今の、録音すべきだった?
怪我の功名ってやつか。とにかくあの男をどうにかすれば良いってわけね。
脳内方針を決めて、再び煙草を口に咥え、スマホに"生活力向上計画"などというよく分からない単語を打ち込んでいれば、再び喫煙室の自動扉が開いた。