ビター・ハニー・ビター
で、ちょうど彼氏に会う日だったから、弱い女アピールして慰めてもらおうとしたのに。
「早く退職したぁい」なんて、すこし結婚も匂わせてみたのに。
何が悪かった?
普通に話してただけだよ?ん?
あれか、今日は上司の初めてとも言える理不尽な横暴にたまらず愚痴を零してしまったからか?
この男にとっては"仕事の愚痴を言う女"が地雷だったって言うのか、 7ヶ月付き合って、初めて知ったよ。
「俺ん家にある初花の荷物は今度配送するわ」
馴染みのバーで絶句するあたし、いつものバーボングラスを傾ける彼。
え、本気で別れる気?嘘でしょ?あたしに欠点なんてあった?何処に?
頭上き流れる句読点が消えてくれないあたしを見抜いていたように、ポケットのスマホが呼ぶ。
「鳴ってるよ?」
「あ、はい、鳴ってる、ね?」
今はそれどころじゃなくない?だって、別れ話だよね?
思うことはある。しかし一応、スマホに目配せすると、確かに無視できない相手だった。
相方、いや、元相方になるのか?その人はあたしへの興味を無くしたかのように視線を前に向けるので指をスライドさせ「もしもし」と、お構い無しに口を開く。
『昼間の件だけど、今から行ける?』
しかもなんだ、さっきの今で、なんなら別れ話のキッカケになったかもしれない話題を振りますか。