ビター・ハニー・ビター

マップアプリを頼りに辿りついたのは、首を持ちあげないとてっぺんが見えない程の巨大なマンションだった。

な、なんだここ…。

ネイビーの色をした夕闇の中ぽっかりと佇むマンションはあまりにも堂々としていて、人の所在を知らしめる光が万華鏡のように照らしている。

…え?間違い?

スマホの地図を何度も確認して、間違いないではことを確かめる。

行けばわかるって言ったけど、大体、専務は言葉足らず。目で見るより身体で覚えろって人。慣れたけど、少し困る。慣れてるから何も言わないけどさ。

配属されて、もう、三年になる。それにしたって、こんな事は初めてだ。

なんだか高級デリヘル嬢にでもなった気分だな。

もしそうだとしたら、専務の友達ならばセレブ間違いないでしょう。こんな所に住んでる訳だし。

……いや、待てよ?

そこで都合のいいあたしの頭は、ピンと何かを結びつける。

て、これ、あれじゃん?
もしかして、芸能人がお忍びで?そういうこと?

専務が言う、あたしが適任って言葉は、今まで散々専務に良妻アピールしたから選ばれたのか!

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