今夜0時、輝く桜の木の下で
次の日。
紺はアルバイトに遅刻こそしなかったが、どこか上の空だった。


「紺……ねぇ、紺!」


シローの声で、紺はハッと我に返った。


「わりぃ、ぼーっとしてた」


「今忙しくないからいいけどさ。どうしたの?」


紺は少しだけ考えて、首を横に振った。


「なんでもない。俺、外の掃除してくるわ」


そう言って、紺は外に出ていった。


「ちょ、紺……ったく、あいつ」


「紺どうかしたの?」


右手にアルコールスプレー、左手に布巾を持ったキラが、テーブルを拭きながらシローに寄ってきた。


「すっごいぼけーっとしてる。減給レベル」


シローは小さくため息をつく。


「昨日の佐藤さんの話、ショックだったんじゃね?
俺もなんか、佐藤さんとの接し方ちょっとわかんなくなっちゃった」


「わかんないけど……それだけじゃなさそうっつうか」


「シロー、なんかイライラしてる?」


「……そーかも」


その時、店のドアの鈴が鳴った。


シローとキラが顔を上げる。


「「いらっしゃいませ」」
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