今夜0時、輝く桜の木の下で
コンビニから戻ってきた紺は、ベンチに座る少年に肉まんとお釣りを渡した。

「はい」

少年はそれを受け取る。

「ありがとう」

「どういたしまして」

そのやりとりを横で見ていたキラは、突っ込むべきなのか悩んだ。

紺は何も気にせず、少年の隣に腰を下ろした。

キラもつられるように紺の隣に座る。

三人並びのベンチ。

紺は肉まんを手に持ったまま、ぼそっと呟いた。

「いただきます」

そして一口かじる。

少ししてから、思い出したように言った。

「そういえば、ノートって返ってきた?」

少年は肉まんの紙を少しめくりながら答える。

「まだ」

そして、肉まんを小さくかじった。

「……多分、もう返ってこない」

キラは目の前で、まるで昔からの知り合いみたいな会話が続いていることに脳の処理が追いつかなかず、肉まんを口に運びかけたまま、しばらく止まっていた。

紺は気にせず続ける。

「取り返さなくていいの?」

少年は肩をすくめた。

「まぁ正直なくても大丈夫」

「なんのノート?」

「数学」

紺はそこで、大きく肉まんを頬張った。

もぐもぐと咀嚼する。

その様子を見て、少年が言った。

「全然興味ないじゃん」

思わず、くすっと笑う。

紺は口を動かしたまま、特に否定もせず頷いた。

その笑顔を見て、キラはなぜか少し安心した。

張り詰めていた空気が、ふっとほどけた気がした。

ようやくキラも肉まんにかぶりつく。

熱い具が口の中に広がった。
< 37 / 47 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop