今夜0時、輝く桜の木の下で
少年が肉まんを食べ終えた頃、不意に口を開いた。

「二人は、よくここ来るの?」

キラが頷く。

「うん。しょっちゅうここでなんか買ってさ、普段は向こうの公園でだべってる」

キラは顎で道路の向こうを指した。

紺が続ける。

「そっちはここあんま来ないの?」

少年は少し考えてから答えた。

「初めて来た……し、コンビニ自体久々かも」

キラは思わず顔を上げる。

「ガチで言ってる?」

「この辺、塾でしか来ないし」

キラは少し考え込んだ。

そして、はっとしたように言う。

「え、待って。てことは」

少年はあっさり言った。

「サボり」

紺が少しだけ笑う。

「サボりも初めて?」

「だね」

少年も笑った。

さっきまでの張り詰めた雰囲気は、もうどこにもない。

少年は肉まんの袋を軽く丸めながら言った。

「俺も公園行ってもいい?」

キラはすぐに答えた。

「いつでも。俺ら基本いるよな」

隣で紺が頷く。

少年は少し嬉しそうに笑った。

「さんきゅ。じゃあ俺帰るわ」

カバンを持ち、立ち上がりそのまま歩き出した。

「ちょっと待って」

紺が声をかけた。

少年が振り向く。

紺は少しだけ声を張り上げて言った。

「俺、紺。で、こいつキラ」

キラは軽く手を上げる。

少年も口を開いた

「俺は——」

その時、コンビニの前を一台の車が通り過ぎた。

キラが声を飛ばした。

「じゃあ、シローって呼んでいい?」

少年は一瞬きょとんとした。

そして、ふっと笑う。

「それ、めっちゃ嬉しいかも」

紺が手を振る。

「またな、シロー」

つられるようにキラも手を振る。

シローも手を振り返した。

そしてそのまま、塾の方へ歩いていった。
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