今夜0時、輝く桜の木の下で
キラと咲夜は賄いを片付け終え、厨房の明かりを消して帰り支度をしていた。

「紺くんとシローくん、大丈夫かな……」

咲夜が少し心配そうに呟くと、
キラは肩を軽くすくめ、笑みを浮かべる。

「絶対大丈夫だって。紺だし」

「そうだね」

キラの目が、ふっと真剣な色に変わった。

「でもさ、二人、なんか俺に隠してる気がするんだよな」

「え……みんなの中で隠し事とか、あるの?」

咲夜は少し驚いたように目を丸くする。

「いや、意図的に隠してるわけじゃないけど……紺は割と話してくれないことあるし」

キラは紺の顔を思い浮かべ、わずかに眉を寄せた。

咲夜はその表情を見て、静かに頷く。

「確かに、紺くんってあんまり自分のこと話さないかも」

「シローはだいたい紺のそういうの察するんだけど、俺は気づかないこと多くてさ」

キラは口を尖らせ、少しだけ視線を逸らした。

「紺、確かにボーッとしてたし、あれは何かあったんだと思う。で、シローは珍しく理由わかんなくてイライラしてたんだろうな」

小さく息を吐き、キラは手をポケットに突っ込む。

「俺とシローは紺に助けてもらったけど、あいつ、困ってても言わないからさ……」

少しだけ言葉を探すように間を置く。

「たまには、頼ってくれてもいいのになって、ずっと思ってる」

その声には、かすかに寂しさが滲んでいた。

「……シローは特にね」

咲夜はそんなキラをまっすぐ見つめる。

「紺くんはね、キラくんとシローくんのこと、すっごく頼りにしてると思うよ」

ゆっくりで、優しくて、重みのある声だった。

「まじ?」

キラの目が、少しだけ明るくなる。

「まじ」

咲夜ははっきりと頷いた。

キラは口元を引き締める。

「咲夜さん、俺、何がなんでも仲直りさせるから……週末、絶対来てね」

「もちろん行くよ。すっごく楽しみなんだから」

咲夜もにっこりと笑う。

そのまま咲夜は帰宅の足を進めた。

キラは咲夜を見送ったあと、明かりの消えた厨房にしばらく残った。
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