今夜0時、輝く桜の木の下で
紺は店を出てすぐ、足早に歩くシローの背中を見つけた。
ようやく追いつき、腕を掴む。
「どうしたんだよ」
息を弾ませながら肩を掴むと、シローは振り払うように振り返る。
「ほっといてよ」
不機嫌そうに言い捨て、そのまま立ち去ろうとする。
紺は慌てて腕を掴み、引き留めた。
「待てって。俺、なんかした?」
シローは視線を逸らし、唇を噛み締める。
「……いや、紺は何も悪くない。俺が勝手にムカついてるだけだから」
「なんだよ、それ」
紺は眉をひそめる。
シローは一瞬だけ紺を見て、苛立ちを抑えきれずに言った。
「紺もさ、俺に“なんでもない”って言うじゃん」
思わず声が大きくなる。
「それは……」
紺は言葉に詰まり、視線を落とした。
「……いや、ごめん。これ、ただの八つ当たりだわ」
シローは息を吐き、少しだけ肩の力を抜く。
「謝んなよ」
紺はすぐに言い返す。
少しの沈黙が落ちた。
「……昨日、あのあとなんかあった?」
シローが静かに問いかける。
紺は一瞬迷ってから、短く答えた。
「悪い。言えない」
シローは紺の言葉を受け止めたまま、しばらく黙っていた。
頭の中を整理するように、わずかに視線を落とす。
「……紺、今困ってる?」
「困ってない。でも、今日は確かにぼーっとしてた。悪い」
紺は苦笑いを浮かべる。
「困ってないならいいや」
シローはあっさりと言い、視線を外した。
「困ってたら、すぐシローに言うって」
紺が少し強めに言う。
「どうかな」
シローは小さく返す。
「なんでだよ」
「だって、実際俺ばっか助けてもらってんじゃん」
「俺、シロー助けたことあったっけ?」
紺は本気で分からないという顔をしていた。
シローは一瞬、言い返しかける。
「……そういう——」
言葉が途中で止まる。
わずかに目を伏せ、何かを飲み込むように息をついた。
「……そういうとこ」
紺は意味が分からず、首をかしげる。
「……が、紺のいいところか」
短い沈黙。
やがて紺が、右手を差し出した。
「仲直り」
「園児かよ」
「別にいいだろ」
シローはその手を強く握った。
「……だな」
握った手はすぐに離れたが、その温度だけがしばらく残っていた。
ようやく追いつき、腕を掴む。
「どうしたんだよ」
息を弾ませながら肩を掴むと、シローは振り払うように振り返る。
「ほっといてよ」
不機嫌そうに言い捨て、そのまま立ち去ろうとする。
紺は慌てて腕を掴み、引き留めた。
「待てって。俺、なんかした?」
シローは視線を逸らし、唇を噛み締める。
「……いや、紺は何も悪くない。俺が勝手にムカついてるだけだから」
「なんだよ、それ」
紺は眉をひそめる。
シローは一瞬だけ紺を見て、苛立ちを抑えきれずに言った。
「紺もさ、俺に“なんでもない”って言うじゃん」
思わず声が大きくなる。
「それは……」
紺は言葉に詰まり、視線を落とした。
「……いや、ごめん。これ、ただの八つ当たりだわ」
シローは息を吐き、少しだけ肩の力を抜く。
「謝んなよ」
紺はすぐに言い返す。
少しの沈黙が落ちた。
「……昨日、あのあとなんかあった?」
シローが静かに問いかける。
紺は一瞬迷ってから、短く答えた。
「悪い。言えない」
シローは紺の言葉を受け止めたまま、しばらく黙っていた。
頭の中を整理するように、わずかに視線を落とす。
「……紺、今困ってる?」
「困ってない。でも、今日は確かにぼーっとしてた。悪い」
紺は苦笑いを浮かべる。
「困ってないならいいや」
シローはあっさりと言い、視線を外した。
「困ってたら、すぐシローに言うって」
紺が少し強めに言う。
「どうかな」
シローは小さく返す。
「なんでだよ」
「だって、実際俺ばっか助けてもらってんじゃん」
「俺、シロー助けたことあったっけ?」
紺は本気で分からないという顔をしていた。
シローは一瞬、言い返しかける。
「……そういう——」
言葉が途中で止まる。
わずかに目を伏せ、何かを飲み込むように息をついた。
「……そういうとこ」
紺は意味が分からず、首をかしげる。
「……が、紺のいいところか」
短い沈黙。
やがて紺が、右手を差し出した。
「仲直り」
「園児かよ」
「別にいいだろ」
シローはその手を強く握った。
「……だな」
握った手はすぐに離れたが、その温度だけがしばらく残っていた。