今夜0時、輝く桜の木の下で
「それじゃ、あとはみんなでごゆっくり。佐藤さん、よろしくお願いしますね」

そう言い残して、キラの母親は二階へと戻っていった。

そのあと、場の空気は一気に緩んだ。

佐藤は炭の様子を見ながら、手際よく肉を焼き続ける。
キラと紺はそれを待ちきれない様子で皿に取り、次々とかぶりついていた。

「お前ら、食い過ぎだろ」

呆れたように佐藤が言う。

「らって○△×?!」

キラは頬いっぱいに肉を詰めたまま、何かを言い返す。

「キラ、何言ってるかわからないよ」

シローが苦笑しながら突っ込んだ。

その横で紺は、何も言わずひたすら食べ続けている。

咲夜はその様子を見て、くすっと小さく笑った。

やがて飲み込んだキラが顔を上げる。

「シローと咲夜さん、ちゃんと食ってる?」

「もういっぱいもらってるよ」

皿を軽く持ち上げて、咲夜が答える。

「俺も」

シローが短く続けた。

咲夜は自分の皿を空にすると、立ち上がって佐藤のほうへ歩いていった。

「佐藤さん、私焼くから食べてください」

「いや、このままで大丈夫だよ」

炭をいじりながら、佐藤が首を横に振る。

「佐藤さんも、ご褒美食べなきゃ」

咲夜はそう言って、半ば強引にトングを取り上げた。

「……じゃあ、お言葉に甘えて」

少しだけ困ったように笑う佐藤。

「はい、どうぞ」

咲夜は肉と野菜を皿に盛り、佐藤に手渡した。

「咲夜さん、俺も焼く! 食うの飽きた!」

キラが勢いよく立ち上がる。

「うん、一緒に焼こ」

咲夜は楽しそうに頷いた。

二人が並んで焼き始める。

その様子を、紺は少し目を細めて見ていた。

そこへ、フランクフルトを片手にシローが隣に腰を下ろす。

「紺、今日全然咲夜さんと話してないじゃん」

「そんなことねぇよ」

視線を逸らしたまま、紺がぶっきらぼうに返す。

「緊張してるんでしょ?」

「うるさい」

紺は肘で軽くシローをどついた。

「なんかさ、キラと咲夜さん、仲良くなってない? キラ、普通にタメ口だし」

そう言われて、紺は二人のほうを見る。

キラはいつも通りの調子で、紺やシローに接するのと同じように咲夜と話していた。

「……まじか」

思わず小さく呟く。

「嫉妬?」

シローがニヤッとする。

「なんでそうなるんだよ」

すぐに否定する紺。

「ごめんごめん、冗談」

シローは軽く笑いながら視線を外し、ふとある一点で止めた。

そして紺の肩を軽く叩き、前を指さす。

その先では、佐藤が箸で肉を持ったまま、キラと咲夜のほうをぼんやりと見ていた。

「……きんも」

紺が小さく呟く。

「紺も一緒じゃん」

すかさずシローが返す。

「まじでないから」

紺は立ち上がり、飲み物を取りに向かった。

その背中を見送ってから、シローは少しだけ声を張る。

「佐藤さん、箸止まってますよ」

その一言で、周囲の視線が集まる。

「全然食べてないじゃないですか」

咲夜が心配そうに言う。

「食べないなら俺食うよ?」

キラがすぐに乗っかる。

「食べるよ。悪い、ぼーっとしてた」

佐藤は苦笑しながら答え、箸を動かした。

少し離れた場所でその様子を見ていた紺は、わずかに口元を緩める。

缶ジュースを開けて、ぐいっと一口飲み込んだ。
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