ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
(気に……なっている。なった……)

 この感情はどのカテゴリーなのか。

「部下のこと気にするの普通」

「なるほど。いい上司だな」

 タバコを咥えてそのまま口を噤む柳瀬。その横顔を見つめながら思う気持ちがある。柳瀬みたいな男が本気で女を口説いたら一発だろうな、と。

 見た目やスペックから文句もない。気遣いも出来て女心もお手のものだ。なんでも器用にこなせる柳瀬が仕事と恋愛を両立できないわけがないのだ。

 同い年の柳瀬、なぜ四宮は柳瀬みたいな男に憧れず俺なんかに興味を持ったのだろうと思わずにはいられない。


「あの子いくつ?」

「二十四……って、それもセクハラ」

「スルッと答えられるんだな。部下のことそこまで把握してるの?」

 突っ込まれるほどボロが出そうで早々に話題を切り上げたい。

「この間のキャリア面談で何年目とかそんな話になったからだよ」

「おお~なるほど。そうなんだ、若いね。二十四かぁ~」

 何かを含むようにそう溢しながら煙を吐く柳瀬、全く心情が読めない。

 俺は人の気持ちを読むのだって得意じゃないんだ。どうしても自分の価値観を前にかざして本質を見抜けないところがある。だからマネジメントだって向いていない。柳瀬みたいに出世欲もさほどない分たいした昇進もしないまま人生を終えそうな気がする。

(ほんと、もっといい男絶対いるぞ)

 俺を想ってくれる四宮になんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
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