ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 その時沸いた気持ちは呆れとは違う、明らかに怒りが混じっていた。

 執権濫用もいいところだが、権利を有効に使う。上司の立場として部下を呼び出すのは容易いことだ。何とでも言い訳はできるし理由もつけられる。四宮の上司としていられて初めてありがたいな、と思った。

 呼びかけたらわかりやすく怯えた反応をするからまた胸がモヤッとする。

 今までならもっと晴れやかな顔をして振り向いていたのに。それが特別な感情を含んでいたんだと今になって実感して本当に俺は鈍くて滑稽だなと笑えてくる。
 
 けれど今の四宮にはそんな嬉しそうな感情は見受けられなくて、なんならとても――困っている。

 それでもそれを無視して呼びつけてミーティングルームに二人きり。四宮はとても気まずそうに視線を泳がせていた。

 体調を聞けば意外だったのか大丈夫だといい、むしろ申し訳なさそうに頭を下げるから謝らせたいわけではないのだ。

 むしろ気にかけてやれなくてこっちが申し訳なくなる。昨夜電話が繋がらなかったことを告げたら目を見開く。
 
 (そんなに意外かよ……)

 心配した。それは部下だから……でもそれ以上に今の四宮は部下だけじゃない。

 一歩踏み込んだ関係だからこそ起こせた行動だった。そしてそれを望んだっていいのだ、四宮こそ。

 なのに……。

 (待ってなかったんだな……)

 結局、この関係の脆さと信頼などないのかと胸に穴が開くような気持ちが湧いた。
< 164 / 248 >

この作品をシェア

pagetop