ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 黙ってなんかいられなかったのだ。
 知りたくて、どうしたって納得できる答えなんか得られないのは分かっていても……知りたかった。

「もとから転属願いは出してたんだ」

「え……」

「そんなに驚く?」

「は、はい……」

 素直に頷いたら「そっか」と、笑われた。

「安積さんは、ずっと生産管理にいてくださると……」

 そう呟いたらフッと微笑まれて、でもその笑顔がどこか寂し気で胸がぎゅっと絞られるような感覚。

「ごめんな」
 
 謝ってほしいんじゃなかった。そんな言葉が欲しかったんじゃない。

「四宮ともっと仕事したかったけどな」
 
 そう言うなら行かないで、私は――どこにも行きたくない。働けるならずっと、安積さんの下で働きたい。働きたかった。

「どちらに……異動されるのですか?」
 
 声が震えた。それを聞いてそれじゃあ私もそこに行きたいです!など、言えるわけはないのだが。それでもその言葉が喉元で引っかかる、今にもこぼれそうなところを必死で飲み込んで尋ねた言葉に安積さんは答えてくれた。

「中国」

(え)

「でも三カ月だけかな」

「三ヶ月?」

「そう、立上げで人手が足りないからってそこにヘルプで行く」

「そ、それが終わったらじゃあ……」

「トーランス」

「え?!」
 
(なに? どこ?!)
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