ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 そんな私の気持ちを表情で読み取ったのだろう。安積さんはプッと吹き出してクツクツと笑いながら教えてくれた。

「ロサンゼルス……そこからちょっと郊外だから知らない?」

「知りません……」

(ロサンゼルス? アメリカ? ていうか!)

「転属願いって……海外なんですか?!」

 声が震える、声だけじゃない手が、身体が震えて……さっきまでとのドキドキじゃない。バクバクと心臓の中の血流が尋常じゃない動きを始めている。

「うん。ずっと希望を出していてやっと通った」

(ずっと?)

 頭の中からサーッと血の気が引いていく感覚。指先までも震えが伝うようで……胸が苦しい。

「入社してきてから四宮の頑張りは傍で見てきて今では安心して仕事も任せられる。これからだって今みたいに頑張ってたら大丈夫だよ」

「……」

「俺がいる間はなんでも相談に乗るよ。四宮が悩んでることやこれからのこと……言えることなら声かけて。力になってやれることなんかしれてるだろうけど、上司としていれる間はなんでも……甘えてくれていいよ?」

「……は、い」

 そのあとキャリア面談は続いたけれど、何をどう話したのかなんかはっきり覚えていない。ただ目の前にいる安積さんが遠くに行ってしまうという事実を受け止められなくて、なんとかその空間で息をして何とわからない返事だけをこぼしていた。
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