ダーリンと呼ばせて～嘘からはじめる三カ月の恋人～
「部長！　十六時からのミーティング資料修正しました！　確認お願いしていいですか？！」

「うん、わかった。転送しといて」
　
　重低音なバリトンボイスでゆっくりと話してくれるから、耳にするだけで心地よくてうっとりとする。そしていつだって優しい。話し方も、声のかけ方も、口調が基本穏やかで優しくて。聞いていても話していてもストレスがない。

「テキトーに休憩しろよ」

　周りに気を使わせないように自分から席をよく立って適度な休憩を取ってくれるから部下たちも気楽に息を付ける。オフィス内からも見える隣接する場所に社員が気軽に立ち寄れるセルフサービスのカフェエリア。そこでいつも淹れているコーヒーはブラック。一息つくときは割り切ってゆっくり休憩しろと言ってくれる。

そう言う通りゆっくりコーヒータイムを取られているけれど本当はただの猫舌だって私は気づいている。

フゥフゥ息を吹きかけて熱いコーヒーをゆっくりすする姿がなんだか可愛い。それでも近寄るとフワッと鼻をかすめるタバコの香りが急に大人の男性感を醸し出すからドキドキさせられる。

　生産管理部管理チーム・第一部部長の安積(あづみ)浩孝(ひろたか)さん。
　
　安積さんは私・四宮(しのみや)こと葉(は)の入社してからずっとお世話になっている直属の上司で、私の好きな人。


　私はずっと、安積さんに片思いをしている。
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