ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 この恋は秘密の恋で、いつか想いを伝えられたらと思うけれどその勇気は出ないまま数年。

 この想いが恋ではなく憧れなのではないのか、そう自分に何度も問いかけたことがある。

 私はやっと仕事を覚えだしたくらいの部下で、歳も離れている。相手は役職のついた上司。釣り合わないことは分かっている。私みたいな女より安積さんの横に並べる素敵な女性がきっといる、なんならもういるっぽい。去年かに本部長が揶揄うように言った言葉に安積さんは照れもせずさらっとこぼしていたのだ。

 「うん、家に待ってるヤツいるし」

 ショックだった。

 その日そのあとの仕事をどうやってさばいて家まで帰ったか記憶がない。それくらい胸に刺さって落ち込んだ。そしてひとりこっそり泣いて、でもやっぱり翌日になったら同じように安積さんを見つめてしまって今日にいたる。しつこい片思い、わかっていても気持ちを簡単に消化できない。これは私の性分かもしれない。

 私は人を好きになったらしつこいんだ。好きになったらずっと、とことんその人を好きになってしまう。
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