ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 元カレに振られて自分への自己肯定がかなり下がった。こんな女と思わなかった、その言葉は私に刺さった。

 私はどんな女なのだろう、自己肯定も下がったところに自分まで見失いかけて誰かを好きになる余裕なんかなかった。

 そんな時に安積さんはそばにいてくれてとくに目立つこともしないような新人の私をずっと面倒見てくれた。

 それは業務の一環、上司だから、そんなことは分かっている。自分が特別な存在だなんて思ったわけじゃない。

 でも、私という人間を見てくれて理解してくれて受け止めてくれた。そのままでいいよと言ってくれる人。


 私が、私でいれる人……そんな人にあと何度出会えるのだろう。


 思うと涙がじわりと滲みだす。

 この涙の意味は……やっぱり悲しさだろうか。それでも決めたんだ、これが私の出来る私らしい最後のこと。

 目元をギュッとぬぐって前を向いたら安積さんが出てきたところで思わず席を立った。
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