ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 冷えた夜、冬の乾燥した張りつめる空気が肌を刺す。吐く息が白い、少し走るだけで息が乱れて体温が上がるよう。

 街中に光るイルミネーションが渇いた空気でより煌めいて綺麗だ。そんな景色の中に、視界の先に安積さんがいる。


「安積さんっ!」

 呼び声に振り向いた安積さんは目を見開いて歩く足を止めてくれた。

「四宮? なんで……」

「はぁ……ごめんなさい。お仕事終わりに……お疲れ様です」

「おつかれ……どうした?」

 突然現れた私に困惑している安積さんがいる。それはそうか、もう時間は二十一時を過ぎている。定時で帰っている私がなぜここにいるのだ、そうなるに決まっている。

「待ってたのか?」

「はい……」

「連絡くれたら……」

 そんなこと簡単に出来るわけがない、それを安積さんも言いかけて察したのか口をそこで噤んでしまう。

「ごめんなさい……でもどうしてもお話ししたくて……会ってちゃんと……あの日を最後にしたくなかった」

 最後、自分で言ったその言葉に胸が締め付けられる。

 もう最後だ。
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