ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 本当に最初からそれを伝えていたらこんな時間を重ねることもなく、四宮を傷つけることもせずに済んだのに。

 なのに最後まで四宮は俺に気丈に振る舞って、抱えなくていいと笑って言うのだ。


 ――私だけが幸せなら……そんなの意味ないから。私は誰よりも安積さんに幸せになってほしい。
 ――思い出にする方が辛いから……好きな人が悲しい思いを抱えているのは辛い。だからっ……。
 

 それは俺だって……。でもそうさせるのは、抱えさせるのは俺自身か。


(これが俺の望んだことなのか?)


 俺が本当にしてやりたいのは……手を伸ばしかけて離れた距離。

 近いと思っていた、差し伸ばせばそこにいてくれる、そう思っていたのにこれは自分が作った距離なのだ。

 離れるようにさせたのは……俺自身だ。

 それから時間は勝手に過ぎていく。忙しさが都合はいい、はそうでも気持ちが追い付いて行かない。考えないといけない事、やらないといけない事、それをさばくのに精一杯で自分の気持ちに向き合う余裕がない。どこまでも変われない自分が嫌になった。
 
 それでもふとした時に、思い出すのだ――四宮を。

 くるくると表情が変わる無邪気な顔が。

 呼んだら振り向く晴やかな顔を。

 モモを愛しく見つめる可愛い瞳が、俺を見上げてくる熱を孕む表情が……それなのに最後、あんなに切なげな顔をしてさよならを言わせた。


 忘れてくれと訴えられ、忘れると言われた。

 忘れたらいい、俺のことなんか。そう思っていたのに――。
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