ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 嘘なら私もついた。私だって……嘘をついた。

「私も……嘘をつきました。安積さんを忘れるなんか嘘、思い出にしたくてこの関係を望んだんじゃない。あなたに好きになって欲しくて、好きになってもらうために嘘をついて恋人になってとお願いしました……初めからずっと嘘をついてました」

「……そうなの?」

 予想外だったのかちょっと驚いた声に恥ずかしくなるが素直に頷く。打算ばかりで嫌われるかもしれない、でももう嘘なんかつきたくないから。

「絶対……好きになってもらおうって……既成事実みたいなものです……」

 そうこぼしたら頭上でプッと吹き出された。

「……可愛いな、四宮は」

「……っ」

「ずっと……可愛かったよ」

「……え?」

「……可愛くて、気づくと四宮のことばっかり考えて……マジで気持ち悪いおっさんじゃんってなってた」

 安積さんの口からこぼされていく想いに戸惑うばかりの私。待って、ちょっと待って……そう思うけれど思うのだ。

 もっと聞きたい。私のことを思ってくれていた気持ちを。夢じゃないなら全部聞かせて欲しい。知りたかった思いを全部取りこぼさないように聞きたい。

「私のこと……女として、見れますか?」

 今だけ十一歳差……きっとすぐにひとまわりの差が開く。この年齢差は絶対に埋めることは出来ない。

「頑張って……大人の女になるから……」

「なる必要なんかない」

 抱きしめられる腕の力が弱まって、安積さんの掌が頬に触れて包んでくる。

 暖かな掌に包まれるとそれだけで体温が上昇する。血流が巡るように滾る。

「……そのままの四宮が好きだ」

「……」
 
「四宮が好きだよ」
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